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ADI社のスマートメーター向けSoC、「Cortex-M3」やADC/RF回路を内蔵

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 米Analog Devices社(以下、ADI社)は2010年11月、スマートメーター/スマートグリッド向けのSoC(System on Chip)「ADuCRF101」を発表した。医療用遠隔測定システムやビルオートメーションシステム、セキュリティシステムなど、電池で駆動するワイヤレスセンサーネットワーク全般で使用できるが、主要な用途として同社が想定しているのは、通信機能を付加することで、より高度なシステムの構成を可能とする電気、ガス、水道などのスマートメーターである。


写真1 AnalogDevices社のRonnKliger氏
写真1 AnalogDevices社のRonnKliger氏 

 ADI社インダストリアル・セグメント エネルギー・グループ ディレクターのRonn Kliger氏(写真1)によれば、同社がエネルギー関連事業として特に注力している分野としては、スマートメーターのほかに、発電システムなどにおけるインバータ/タービン制御、高精度な測定が要求される電力線システムがある。日本に関しては、「スマートメーターの分野と、エネルギーの貯蔵(電池の監視)の分野、家庭のエネルギー管理(HEMS)の分野に潜在的な市場が存在すると感じている」(Kliger氏)という。同氏は「エネルギー分野において顧客が当社に期待しているのは、当社の測定関連技術と通信関連技術に対してだ。シグナルコンディショニング、データ変換、制御/信号処理、RF伝送、電力線伝送(Power Line Communication)、インターフェース、パワーマネジメントといった各技術領域に対応するIC製品を持っていることが当社の特徴的なところだ」と説明する。

 エネルギー分野で、ADI社の主力製品となっているのは、次のようなものである。まずは、電圧/電流/電力などの測定に用いられるアナログフロントエンドICが挙げられる。これは、可変ゲインアンプ、A-Dコンバータ、プロセッサなどで構成される。また、各種メーター用途で使われるRF通信ICや、電力線監視用のASSP、PLC用IC、パワーマネジメントIC、プロセッサ(DSP)、さらには各種アンプ製品やアイソレータなどの汎用製品も有している。

 一方、エネルギー分野における一般的な課題と傾向として、Kliger氏は次のように述べている。まず、スマートメーターの分野については、「例えば、無線通信を利用するのか、それともPLCを利用するのかといったところから国や地域によって大きく異なる」という課題を挙げている。また無線通信についても、「IEEE 802.15.4gが候補」(同氏)ではあるものの、標準となる確固たる規格が存在しない。さらには、切迫したニーズが存在するのにもかかわらず、要求仕様は不明確である。例えば、携帯電話機などとは異なり、水道/電気/ガスの各種メーターは建屋に据え付けられるので、10〜20年といった長期にわたる利用が想定される。しかしながら、10年後、20年後の要件が現時点で特定できているわけではない。Kliger氏は、こうした状況に対応するには、「コストとのトレードオフをにらみつつ、柔軟性を確保することが重要だろう」と述べている。ADI社の場合、現状は、主にプロセッサの部分で、ソフトウエアによって柔軟性を確保するというアプローチをとっている。「アナログ部分についても、柔軟性を持たせることは重要だとは思うが、まだ構想の段階であり、具体的に製品に反映できているわけではない」(同氏)としている。

 このような背景もあり、ADuCRF101は、「プログラマブル無線に必要な素子をすべて集積する」(ADI社)というコンセプトの製品となっている。モード設定によって862MHz〜928MHz、431MHz〜464MHzのどちらかで使用できる無線トランシーバ、6チャンネル入力でサンプリングレートが1メガサンプル/秒の12ビットA-Dコンバータ、英ARM社の32ビットマイクロプロセッサコア「Cortex-M3」、フラッシュメモリー、SRAMなどを集積している。

 周辺機能としては、8ウェイのプログラマブル分周器を備える16MHzのPLL(Phase Locked Loop)、ウォッチドッグタイマー、ウェイクアップタイマー、割り込み制御回路、SPI(Serial Peripheral Interface)、I2C、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、PWM(パルス幅変調)、GPIO(汎用入出力)を内蔵する。

 変調方式としては2FSK(2 Level Frequency Shift Keying)/GFSK(Gaussian Filtered FSK)/OOK(On Off Keying)/MSK(Minimum Shift Keying)/GMSK(Gaussian Filtered MSK)をサポートする。2FSKの場合のデータレートは1kbps(キロビット/秒)〜300kbps。送信電力は−20dBm〜+12dBm。受信回路の感度は38.4kbps動作の場合で−107.5dBmとなっている。

 スマートメーターでの利用を前提としていることから、消費電力も抑えられている。電源電圧は1.8V〜3.6Vで、動作電流は送信モードで8.7mA〜32mA、受信モードで12.8mA。計6種類のスリープモードを備え、SRAMのデータ保持(リテンション)機能を有効にした場合の消費電流は1.6μA。

 フラッシュメモリー/SRAMがそれぞれ64Kバイト/8Kバイトの「ADuCRF101BCPZ64」と同128Kバイト/16Kバイトの「ADuCRF101BCPZ128」の2製品がある。1000個購入時の単価は前者が4.05米ドル、後者が4.50米ドル。パッケージはいずれもサイズが9mm×9mmの64端子LFCSP。

(飴本 健)

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