検索
特集

「汎用プロセッサとDSPは“適材適所”で」――CEVA社が自社DSPコアの優位性を強調

Share
Tweet
LINE
Hatena

 米CEVA社は、DSPのIP(Intellectual Property)コアをライセンス供給するベンダーである。モバイルハンドセット、モバイルブロードバンド機器(データカードなどを搭載したもの)、ポータブルマルチメディア機器、ホームエンターテインメント機器を主なターゲットとしている。

 中でも、モバイルハンドセットは、CEVA社にとって最大の市場となっている。2001年に創業したCEVA社にとって、ビジネス上の転機は2007年だった。この年、それまではベースバンドチップとして米Texas Instruments(以下、TI)社の製品のみを携帯電話機に採用していたフィンランドNokia社が方針を変更し、ドイツInfineon Technologies社、スイスST-Ericsson社、米Broadcom社、米VIA Telecom社の4社のベースバンドチップを採用するようになったのである。TI社の製品以外は、いずれもCEVA社のDSPコアを搭載していたため、それを機に同社の名が知られるようになったという。そのほかにも、米Apple社、韓国Samsung Electronics社、韓国LG Electronics社も、CEVA社のDSPコアを用いたベースバンドチップを採用している。Samsung社を例にとると、以前は米QUALCOMM社のベースバンドチップを用いていたのだが、Nokia社の場合と同様に、CEVA社のDSPを採用したInfineon社、ST-Ericsson社、Broadcom社の製品を使うようになった。

写真1 CEVA社のGideonWertheizer氏
写真1 CEVA社のGideonWertheizer氏 

 CEVA社でCEO(最高経営責任者)を務めるGideon Wertheizer氏によると、「モバイルハンドセット市場向けの製品の売上高は、当社の売上高の約70%を占めている」という(写真1)。同社は、30米ドル程度の安価な携帯電話機から、600米ドルほどのスマートホンまで、幅広い価格帯/性能のハンドセットに対応できるDSPコアをそろえている。Wertheizer氏は、「TI社やQUALCOMM社のベースバンドチップから、当社のDSPコアを搭載したベースバンドチップへの置き換えが進んでいる。こうした動きがあるので、モバイルハンドセットの分野における当社のシェアはさらに伸びていくだろう。われわれは、2010年第4四半期にはシェアが40%に達すると見込んでいる。また、今後2年以内に45〜55%までシェアを伸ばしていきたい」と語った。

 さらに、モバイルブロードバンド機器やポータブルマルチメディア機器の分野も成長が著しい市場である。特にモバイルブロードバンド機器は、年平均成長率(CAGR)も42.6%と、携帯電話機以上に伸びている分野だと言われている。また、HD(高品位)オーディオやHDビデオなどをはじめとするホームエンターテインメント機器も高性能のDSPが要求される分野であり、「ここでも、さらなる成長が期待できる」(Wertheizer氏)という。

 CEVA社のDSPコアには、以下の3タイプがある。まずは、「CEVA-TeakLite-?」や「同?」などに代表されるハーバードアーキテクチャを採用したものだ。これらの製品は低価格であることを特徴としており、2G(第2世代)の携帯電話機用のベースバンドチップに採用されている。次に、「CEVA-X1622」、「CEVA-X1641/X1643」といった並列処理性能を高めたアーキテクチャの製品がある。VoIP(Voice over Internet Protocol)や、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)などを含む3Gの携帯電話機、SD(標準品位)ビデオといった用途に向けたもので、CEVA-X1622はMAC(乗算累算器)を2個、CEVA-X1641/X1643はMACを4個搭載している。3つ目が、「CEVA-XC」など、ベクター演算を行うアーキテクチャを採用した製品である。2009年に発表したCEVA-XCは、16〜64個のMACを搭載する。HDビデオ、3Dグラフィックス、3.5G/4Gの携帯電話機、デジタルテレビなどをターゲットとする。CEVA-XCは、LTE(Long Term Evolution)、WiMAX、HSPA+(High Speed Packet Access Plus)といった主な規格に1コアで対応できる。対応する規格を変えるには、ソフトウエアを変更するだけでよい。また、2010年2月には、「CEVA-MM3000」を発表した。H.264のほかSVC、MVCで圧縮された解像度が1080pの画像を、60フレーム/秒でデコードできるという。

「デジタル信号処理はDSPで」

 比較的性能の高いプロセッサコアを搭載したSoC(System on Chip)などでは、さまざまな制御処理を行ってもプロセッサコアの処理能力に余裕があるので、オーディオ処理のようなデジタル信号処理もプロセッサコアで行う例がある。だが一般的に、この種のデジタル信号処理にはDSPを使ったほうが処理能力の面でも消費電力の面でもメリットが大きい。例えば、英ARM社のプロセッサコア「Cortex-A9」とCEVA社のTeakLite-IIIを比較すると、あるオーディオ処理の例では、前者の消費電力は後者の消費電力の8倍になるという。Wertheizer氏は、「CEVA社のDSPコアを使うとなると、当然そのためのライセンス料が発生する。そのため、DSPを使いたがらないケースもある」と述べた上で、「(SoCに搭載するような)汎用プロセッサは、制御系をはじめとする一般的な処理に適したもので、デジタル信号処理には、やはりDSPが強い。当社のDSPコアを用いることで、低消費電力かつ高性能な信号処理が行える」と語った。

(村尾 麻悠子)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る