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「低価格品から高性能品まですべてARMコア」――NXP社がマイコン事業で攻勢

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 オランダNXP Semiconductors(以下、NXP)社が、英ARM社のプロセッサコア「Cortex-Mシリーズ」を搭載するマイコン製品の品種を拡充している。2010年10月には、同社従来品よりも消費電流を低減する機能を強化した「LPC1100L」と「LPC1300L」の第2世代品を発表。そして同年11月には、「Cortex-M0」と「Cortex-M4」を搭載する「LPC4300」をラインアップに追加した。2011年以降もさらに品種の拡充を続けることにより、競合他社に対する優位性を確立する方針だ。


2002年からARMコアを採用

写真1 NXP社のPierre-YvesLesaicherre氏
写真1 NXP社のPierre-YvesLesaicherre氏 

 NXP社は、前身であるオランダPhilips社の半導体部門のころから、米Intel社の8ビットプロセッサコア「8051」を採用するなどして、マイコン事業を展開してきた。2002年には、ARM社のプロセッサコアである「ARM7」や「ARM9」を採用したマイコンの販売を始めた。そして、現時点で、NXP社のマイコン製品のプロセッサコアは、すべてARM社のものとなっている。NXP社でロジック&マイクロコントローラ製品ビジネスラインのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるPierre-Yves Lesaicherre氏(写真1)は、「Cortex-Mシリーズを搭載したマイコン製品を展開している競合他社は、ローエンドのマイコンに自社開発の8ビットコアを採用していたりすることが多い。しかし、当社は、ローエンドからミドルレンジ、ハイエンドに至るまで、すべてのマイコン製品にARMコアを採用している点で大きく異なる」と語る。

 現時点で、NXP社のマイコン事業の売上高では、ARM7/ARM9を採用した製品がその多くを占めている。ただし、今後発表する新製品はすべてCortex-Mシリーズを用いたものとなるため、売上高の観点からも徐々にCortex-Mシリーズへの移行が進むと見られる。

3つの製品グループ

 Cortex-Mシリーズを用いた同社のマイコン製品は、搭載するプロセッサコアによって、3つの製品グループに分かれている。1つ目は、ARM社の32ビットマイコン向けプロセッサコアで最も広く採用されている「Cortex-M3」を用いた製品グループである。「LPC1300シリーズ」、「LPC1700シリーズ」、「LPC1800シリーズ」などがこの製品グループに含まれる。

図1 NXP社の「Cortex-Mシリーズ」搭載マイコンが対象とする市場
図1 NXP社の「Cortex-Mシリーズ」搭載マイコンが対象とする市場 

 2つ目は、既存の8ビット/16ビットマイコンのように消費電力の少なさが重要視される用途に向けた製品グループで、Cortex-M0を搭載している。同グループの製品には、「LPC1100シリーズ」と「LPC1200シリーズ」がある。3つ目は、高度な信号処理機能が必要となる用途向けのものであり、LPC4300をはじめとしたCortex-M4を搭載する製品グループだ。

 Lesaicherre氏は、「いわゆる8ビットマイコンから、DSPを搭載するような高い処理性能を持つマイコンまで、すべての用途をCortex-M3でカバーすることはできない。用途に応じて、Cortex-M0やCortex-M4を採用する必要があると考えている。また、Cortex-Mシリーズの間にはある程度の互換性があるので、同じソフトウエア開発ツールを利用できたり、組み込みソフトウエアを再利用したりすることができる。このことも大きなメリットになる」と説明する(図1)。

消費電流を低減した第2世代品

 このような背景で開発された製品のうち最新のものとなるのが、先に述べたLPC1100LとLPC1300Lの第2世代品、そしてLPC4300である。

 LPC1100Lは、Cortex-M0を搭載するマイコンで、他社の8ビット/16ビットマイコンと競合する製品だ。新たに発表した第2世代品は、2010年夏に発表した第1世代品よりも消費電流が少ないことを特徴としている。第1世代品は、通常動作時の消費電流が150μA/MHz、スリープ時で6μAだったが、第2世代品はそれぞれ、130μA/MHz、2μAまで低減されている。なお、この比較において、通常動作時の電源電圧は3.3V、動作周波数は50MHzである。同社が、2011年内に発表を予定しているLPC1100Lの第3世代品では、「通常動作時の消費電流を100μA/MHzにまで低減する。そして、スリープ時の消費電流は、他社の8ビット/16ビットマイコンと比べても最高レベルになるであろう1μAを目指している」(Lesaicherre氏)という。

 また、LPC1100Lの第2世代品では、機器の状態に合わせて動作モードを切り替えることができる「パワー・プロファイル」という機能が追加された。この機能では、通常の動作モード以外に、内部回路に供給する電源電圧をチップ内部で上げることにより処理性能を高める「CPUパフォーマンスモード」と、電源電圧を下げて消費電力を低減する「低アクティブパワーモード」に切り替えることが可能である。

 このパワー・プロファイルを導入するにあたって、第1世代品では2.4V〜3.3Vだった電源電圧範囲を、第2世代品では1.8V〜3.6Vに広げている。NXP社によれば、通常の動作モードと比べた場合、CPUパフォーマンスモードでは処理性能を35%以上向上させることができ、低アクティブパワーモードでは消費電力を20〜30%低減できるという。Lesaicherre氏は、「パワー・プロファイルを利用するためのAPI(Application Programming Interface)を提供している。これを使えば、マイコンを動作させる制御プログラムの中に同機能を容易に組み込むことができる。既存の8ビット/16ビットマイコンには、このような複数の動作モードを簡単に切り替えられる機能を搭載している製品はなかった」と強調する。なお、Cortex-M3を採用したLPC1300Lの第2世代品も、パワー・プロファイルを搭載している。

非対称のデュアルコア構成

 一方、LPC4300は、Cortex-M3と比べてデジタル信号処理に関する機能が強化されたCortex-M4を搭載している。Cortex-M4を搭載したマイコンとしては、米Freescale Semiconductor社が2010年6月に発表した「Kinetis」に次いで2製品目となる。ただし、LPC4300はKinetisとは大きく異なる製品となっている。それは、Kinetisが、Cortex-M4を1コア搭載するシングルコアのマイコンであるのに対して、LPC4300は、Cortex-M4とCortex-M0をそれぞれ1コア搭載する非対称のデュアルコアマイコンであることだ。基本的には、Cortex-M4が、映像/音声データの処理やアルゴリズムの制御などのデジタル信号処理を行い、Cortex-M0が、データ転送や入出力処理などの周辺回路のリアルタイム処理を行うことになる。Lesaicherre氏は、「非対称のデュアルコア構成にすることにより、シングルコアのCortex-M4マイコンを用いる場合に必要になる外付けのASICが不要になる。また、デジタル信号処理を行わないときには、消費電力の大きいCortex-M4を動作させずに済むというメリットもある」と説明する。

 LPC4300のもう1つの特徴となるのが、2010年9月に発表したCortex-M3マイコンのLPC1800シリーズから採用し始めた周辺機能を備えていることである。まず、「デュアルバンク・フラッシュ」では、内蔵する1Mビットのフラッシュメモリーを2つの領域(バンク)に分けて扱うことが可能だ。次に、SPI(Serial Peripheral Interface)フラッシュインターフェースは、内蔵のフラッシュメモリーと同じメモリー空間に外付けのシリアルフラッシュメモリーをマッピングすることができる。データ転送速度は、1レーン当たり80メガビット/秒(Mbps)。4レーンを備えていることから、データ転送速度は最大320Mbpsとなっている。そして、SCT(State Configurable Timer)サブシステムは、PWM(パルス幅変調)波形の生成やA-Dコンバータの同期化などの複雑なイベント制御を、プロセッサに負荷を与えることなく実現できる機能である。

 さらに、LPC4300では、GPIO(General Purpose I/O)の機能を大幅に拡張したシリアルGPIO(SGPIO)という周辺機能が新たに追加された。GPIOのシリアル端子版とも言えるSGPIOを用いることにより、標準で搭載されているシリアルの入出力端子が不足した場合でも、追加の入出力端子として容易に割り当てることが可能だ。LPC4300のSGPIOを使えば、タイマー/シフトレジスタユニットを備えたシリアルの入出力端子を最大16本まで追加するのと同等のことが行える。

(朴 尚洙)

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