三菱電機は2011年2月、東京都内で開催した『2010年度研究開発成果披露会』において、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の走行用モーター向けに開発している電磁石モーターを参考出品した。
現在、EVやHEVの走行用モーターには、ネオジムやディスプロシウムなどのレアアースを用いる永久磁石が使用されている。しかし、これらのレアアースの供給が不安定になったり、価格が高騰していたりしていることから、使用するレアアースが少ない、もしくはレアアースを用いない走行用モーターの開発に向けた動きが活発化している。
三菱電機が今回出品したモーターは、ローター側の界磁を電磁石で発生させる、いわゆる電磁石モーターである。独自構造の積層コア磁極や、磁気飽和を緩和させるフェライト磁石を採用したローターを用いることにより、永久磁石モーターと同等のトルク性能を得ることに成功した(写真1)。単位質量当たりのトルク出力は5.0Nm/kgで、永久磁石モーターと同等である。また、高速道路などにおける定速走行域の条件(トルク:25Nm、モーターの回転数:3000回転/分)において、永久磁石モーターの効率が90%であるのに対して、同社の電磁石モーターは89%の効率を達成した。さらに、サイズについても、同出力の永久磁石モーターとほぼ同等だという。なお、出品したモーターの出力は約20kWである。
ただし、課題も残っている。定速走行域よりもトルク性能が要求される加速走行域の条件(トルク:65Nm、モーターの回転数:1000回転/分)において、永久磁石モーターの効率が91%であるのに対して、同社の電磁石モーターの効率が83%と低いことだ。同社は、「このような課題を2012年度末までに解決し、実用化につなげたい」としている。
なお、この電磁石モーターは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託により開発されたものである。
(朴 尚洙)
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