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Agilent社が普及価格帯オシロを発表、波形更新レートは最大100万回/秒

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 米Agilent Technologies社は2011年2月、東京都内で記者説明会を開催し、デジタルストレージオシロスコープ(DSO)とミックスドシグナルオシロスコープ(MSO)の新製品「InfiniiVision 2000Xシリーズ」と「同3000Xシリーズ」を発表した(写真1)。両シリーズとも、汎用オシロスコープ(あらゆる用途でごく一般的に使用可能な普及価格帯の“定番品”)の市場を狙ったもので、「価格は抑えつつ、高い性能 /機能を実現する」(同社)ことを意識した製品となっている。2シリーズ合わせて計26品種を用意しており、すでに出荷を開始している。

写真1 「InfiniiVision2000Xシリーズ」(左)と「同3000Xシリーズ」
写真1 「InfiniiVision2000Xシリーズ」(左)と「同3000Xシリーズ」 

 2000Xシリーズでは、帯域幅が70MHz〜200MHzのDSO/MSOをそれぞれ6品種ずつ用意している。DSOは2チャンネルまたは4チャンネルのアナログチャンネルを、MSOは2/4チャンネルのアナログチャンネルに加え、8チャンネルのロジックチャンネルを搭載している。

 一方の3000Xシリーズには、帯域幅が100MHz〜500MHzのDSO/MSOが7品種ずつある。こちらもアナログチャンネル数は2または4だが、MSOのロジックチャンネル数は16となっている。

 2000Xシリーズは13万8777〜37万4217円、3000Xシリーズは31万7113〜130万8239円の範囲に価格(税抜き)を抑えつつ、それぞれ最大5万回/秒、最大100万回/秒の波形更新レートを実現している。この価格対性能比を実現できた理由は、新シリーズのために開発したASIC 「MegaZoom IV」にあるという。

 オシロスコープで取り込まれた信号は、A-D変換された後、そのデータを格納/管理する回路(取得メモリーマネジャ)と、表示データの演算を行う回路(プロッタ)を通って画面に表示される。一般的なオシロスコープでは、取得メモリーマネジャとプロッタが別々のチップになっている。そのため、これらのチップ間のデータ転送速度が100メガバイト(MB)/秒〜200MB/秒にとどまり、波形更新レートを高める上でのボトルネックとなっていた。そこで Agilent社は、取得メモリーマネジャとプロッタを集積したASIC「MegaZoom III」を開発、チップ間のデータ転送速度を1ギガバイト(GB)/秒まで向上することに成功した。そして、今回新たに開発したMegaZoom IVでは、それをさらに4GB/秒まで引き上げている。これによって、最大100万回/秒もの波形更新レートが実現できるようになったという。 MegaZoom IIIは、今回発表したシリーズよりも上位の機種に搭載されている。2000X/3000Xの両シリーズには、そのMegaZoom IIIよりもさらにデータ転送速度が速いASICが搭載されていることになる。ただし、半導体技術の進歩により、ASIC自体の価格はMegaZoom IIIよりもMegaZoom IVのほうが1/5〜1/7まで下がっているという。

 さらにMegaZoom IVには、GUI(Graphical User Interface)、マスク機能、ファンクションジェネレータ(波形生成)機能、シリアルデコーダ機能などを追加した。これによって、 2000X/3000Xシリーズでは、オプションとしてプロトコルアナライザやファンクションジェネレータの機能を追加することも可能となっている。なお、プロトコルアナライザの機能は3000Xシリーズのみに搭載できる。

写真2 2000Xシリーズの「MSOX2024A」を使ったデモ
写真2 2000Xシリーズの「MSOX2024A」を使ったデモ クロック信号5万サイクルごとに1回発生するグリッチも確認できている。
写真3 3000Xシリーズの「MSOX3054A」を使ったデモ
写真3 3000Xシリーズの「MSOX3054A」を使ったデモ ラント波形(通常よりもピークが低い波形)をトリガーしているところ。検索条件(ここではラント波形)をそのままトリガー条件にコピーできる機能を新たに備えた。

 写真2、3に示したのは、各シリーズのデモンストレーションの様子である。

 2000X/3000Xシリーズがターゲットとしている汎用オシロスコープの世界市場規模は約250億円とされている。Agilent社でオシロスコープ事業部 マーケティング部長を務めるJun Chie氏は、「当社はハイエンド向けのオシロスコープでは高いシェアを誇っているが、競合他社品が数多く存在する汎用市場のシェアをもっと引き上げる必要がある。今回ターゲットとする市場はかなり出荷数量の多いところだし、大学などの教育機関で使うオシロスコープもこの市場に含まれる。学生に使ってもらうことができれば、彼らが社会人になってからも(使い慣れているという理由で)使ってくれる可能性が高くなる。そのため、この市場は何としても押さえておきたい」と意気込みを語る。

 記者説明会では、先行ユーザーとして3000Xシリーズの「DSOX3054A」を使用した、オーバートーンの取締役開発部長である井倉将実氏が、その使用感について語った。井倉氏は、「例えば、これまで10分程度かかっていたパルスカウントが数秒で、終日費やしていたマスク試験が1分程度で終わる」といった事例を紹介。「測定ボタンを押してから波形が出るまでのレスポンスが速い。また、これまではマスク試験を行いたいがために上位機種を購入していたが、新シリーズはマスク機能を搭載しているので、今後は、この汎用オシロが1台あれば事足りるようになるだろう」と述べた。

 また、2000X/3000Xシリーズでは波形の見やすさにも力を入れた。新シリーズの画面サイズは一般的な汎用オシロの5インチまたは7インチに比べて 8.5インチと大きく、解像度も主流のQVGA(320×240ピクセル)やWQVGA(400×240ピクセル)からWVGA(800×480ピクセル)に高めている。

 両シリーズの外形寸法は、幅380.6mm×高さ204.4mm×奥行き141.5mm。本体のみの質量は3.85kgとなっている。

(村尾 麻悠子)

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