検索
特集

Xilinx社の「Cortex-A9」搭載品、単価は15米ドルから

Share
Tweet
LINE
Hatena

 米Xilinx社は2011年3月、英ARM社のアプリケーション処理用プロセッサコア「Cortex-A9」をデュアルコア構成で搭載し、周辺機能や入出力機能(I/O)はFPGAのように再構成できるIC「Zynq-7000ファミリ」を発表した。プログラマブルロジック部の容量(ゲート数)や、高速トランシーバの有無などが異なる4品種を用意した。サンプル出荷の開始時期は、先行評価を行ってきたユーザー向けが2011年後半から、一般ユーザー向けが2012年前半からとなっている。車載情報機器、監視カメラ、医療用機器、産業用機器、放送用機器など、さまざまな用途に向ける。


写真1 Xilinx社のVincentRatford氏
写真1 Xilinx社のVincentRatford氏 

 Zynq-7000ファミリは、「EPP(Extensible Processing Platform)」の第1弾製品となる。EPPは、Xilinx社が2009年10月に発表したARM社との提携に基づく製品プラットフォームである。これは、ARM社のプロセッサコアIP(Intellectual Property)「Cortexシリーズ」とFPGAのアーキテクチャを融合することを特徴とする。Xilinx社でワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるVincent Ratford氏(写真1)は、「EPPは、ASICでも、ASSPでも、SoC(System on Chip)でも、FPGAでもない新しい製品カテゴリを指す言葉だ。当社は、EPPの第1弾製品であるZynq-7000ファミリの投入により、FPGAでは対応できなかった機器市場に対応できるようになる。EPPが対象とする機器市場は、2014年末までに合計127億米ドルの規模に拡大すると見ている。この巨大な市場で受注を獲得することで、競合のFPGAベンダーと比べて半年〜1年程度先行した成長を実現できるだろう」と語る。

2つの回路ブロック

 Zynq-7000ファミリの回路ブロックは、プロセッサコアであるCortex-A9に関連するプロセッシングシステム部と、周辺機能や入出力機能と関連するプログラマブルロジック部に分けられる。プロセッシングシステム部は、最大800MHzの周波数で動作するデュアルコア構成のCortex-A9、内蔵メモリー、コントローラを統合したメモリーインターフェース、各種I/Oから構成される。内蔵メモリーの容量は、L1キャッシュが命令用とデータ用にそれぞれ32Kバイト、L2キャッシュが512Kバイト、オンチップメモリーが256Kバイト。外部メモリーとしては、DDR(Double Data Rate)2、DDR3、LP(Low Power)DDR2、QSPI(Queued Serial Peripheral Interface)、NOR型/NAND型フラッシュメモリーを接続することが可能だ。各種I/Oのうち、SDIO(Secure Digital I/O)、USB、ギガビットイーサーネットにはDMA(Direct Memory Access)機能が搭載されている。

 一方、プログラマブルロジック部は、品種ごとに決まった容量の範囲内で、DSP、ブロックRAM、I/Oなどとして再構成することが可能だ。分解能が12 ビット、サンプリング速度が1メガサンプル/秒のA-Dコンバータも2個搭載している。プロセッシングシステム部とプログラマブルロジック部は、3000 以上の内部インターコネクトで接続されており、最大100ギガビット/秒(Gbps)の帯域幅を備える。また、これらのインターコネクトは、ARM社が策定するオンチップバス規格「AMBA(Advanced Microcontroller Bus Architecture) 4.0」のプロトコルである「AXI(Advanced Extensible Interface)4」に準拠している。「内部インターコネクトがAXI4に準拠しているので、プログラマブルロジック部でAXI4を用いたさまざまなIPを利用できることも特徴の1つだ」(Ratford氏)という。

表1 各品種におけるプログラマブルロジック部の容量/機能
表1 各品種におけるプログラマブルロジック部の容量/機能 

 プログラマブルロジック部の容量や機能は、品種によって異なる(表1)。容量は、最も価格の安い「Zynq-7010」が、ASIC相当のゲート数に換算して43万個、「Zynq-7020」が同130万個、「Zynq-7030」が同190万個、「Zynq-7040」が同350万個となっている。また、Zynq-7010とZynq-7020のプログラマブルロジック部は、同社が2010年6月に発表した「Xilinx 7シリーズ」のうち、低消費電力化/低コスト化を重視した「Artix-7」をベースとして開発された。一方、Zynq-7030とZynq-7040のプログラマブルロジック部は、Artix-7よりも高性能な製品として開発された「Kintex-7」をベースにしている。このため、Zynq-7030と Zynq-7040がプログラマブルロジック部に内蔵する高速のシリアルトランシーバは、Zynq-7010とZynq-7020には搭載されていない。

 最後に、Ratford氏は、Zynq-7000ファミリの代表的な用途をいくつか挙げた。まず、車載情報機器には、Zynq-7010とZynq- 7020を向ける。特に、Zynq-7010については、「小さい外形寸法、2W以下の消費電力、100万個購入時の単価が15米ドル」(同氏)など、車載情報機器の要件に最適とする。次に、FA(Factory Automation)機器には、Zynq-7010、Zynq-7020、Zynq-7030を向ける。最後に、放送用機器には、Zynq-7020、 Zynq-7030、Zynq-7040を向ける。放送用カメラについては、すでに日本の顧客と評価作業を進めている段階にあるという。

(朴 尚洙)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る