日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2011年8月、動作時の消費電力が小さく、大量購入時の参考価格が1.95米ドルと安価なDSP「TMS320C553x」を発表した。想定用途は、音声認識やリアルタイム検針システム、電子黒板、指紋認証システム、携帯型の医療機器、携帯型オーディオ機器など(図1)。既にサンプル出荷を開始している。評価キット「C5535 eZdsp」の提供も始めた。
TMS320C553xは、低消費電力と低価格を特徴とするTexas Instruments(TI)のDSP「C5000シリーズ」に追加された新製品という位置付けである。動作時の消費電力が小さいという特徴はそのままに、さらに価格を低減した。TIのDSP System部門のC5000 General Managerを務めるMatt Muse氏(図2)は、「競合他社品と比べて、価格は30%低い」と協調する。なお、同社が2009年に発売したC5000シリーズの幾つかの製品は、価格帯が4米ドル〜8米ドルだった。
消費電力については、「同等の機能を持つ競合他社品と比べて、動作時の消費電力は1/6、スタンバイ時の消費電力は1/20と小さい」(Muse氏)と主張する。TMS320C553xの動作時消費電力は、動作周波数50MHz品で電源電圧が1.05Vのとき0.15mW/MHz、動作周波数100MHz品で電源電圧が1.3Vのとき0.22mW/MHzである。
「今まで、デジタル信号処理を行うのに必要なDSPを搭載したくてもコストの観点であきらめることが多かった。しかし、TMS320C553xの投入により、DSPをマイコンと同等の価格帯で入手できるようになる。このインパクトは大きいだろう」(同氏)。
動作周波数は50MHzまたは100MHz。SDメモリーカード向けやeMMC、I2S、I2C、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、SPI(Serial Peripheral Interface)、GPIO(General Purpose Input/Output)といったインタフェース回路を搭載した。
集積した周辺回路が異なる4品種がある(図3)。例えば、最も豊富な機能を搭載した「C5535」には、USB 2.0のハイスピードモードに対応したPHYやインタフェース回路、記録容量が320Kバイトのフラッシュメモリー、最大1024点のデータに対して高速フーリエ変換を施すコプロセッサ、液晶ディスプレイコントローラ、A-Dコンバータなどが集積されている。パッケージは、いずれの品種も、外形寸法が12mm×12mmのBGAである。
フラッシュメモリーの記録容量の範囲は64Kバイト〜320Kバイト。LDOを内蔵しており、外部から供給する電源系統は1系統でよい。
(前川 慎光)
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