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LED照明のリスクWired, Weird(2/2 ページ)

LED照明はよいことばかりではない。これまでの照明にはなかった落とし穴が幾つかある。例えば、発光タイミングの問題や発熱が少ないことによる問題、力率の問題だ。低力率に対応するには、LEDの電源回路に工夫が必要だ。

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市販のLEDライトの問題点

 次に、市販のLEDライトの事例について紹介しよう。蛍光灯代わりに利用できる160灯のLEDライトが、通販やオークションなどにおいて安価な価格で販売されている。筆者も100円オークションで購入した。このLEDライトを分解したところ、帽子型のLED素子を直列に40個接続したLEDストリングを4系統用いており、それぞれの系統が電源回路に接続されていた。図1は、この電源回路の回路図である。

 図1について簡単に説明しよう。まず、入力部にあるコンデンサC1でLEDの電流を調整している。次に、ダイオードブリッジでAC100Vを整流してから、LEDストリングに直流電流を流している。LEDストリングには40個のLED素子が直列に接続されているので、各LEDの順電圧(VF)を3Vとすると、LEDを点灯させるにはDC120V以上の電圧が必要になる。一方、各LEDに印加される電圧が2.5V以下になるとLEDは発光しなくなる。つまり、LEDストリングは、印加電圧がDC100V以下になると消灯してしまうのだ。このことは、整流電圧がDC100V以下になっているときには電流が消費されないため、無効電力が発生していることを意味するので、電源回路の力率はかなり低いと言わざるをえない。また、消灯している時間が長いため、照明としてのちらつきが大きく、健康被害を起こしやすいという報告もある。これは、商用電源を全波整流してLED素子を点灯させる際の点灯周波数が100Hzもしくは120Hzになるためである。

図2 試作した36灯のLEDライト
図2:試作した36灯のLEDライト

 力率を向上してちらつきの影響をなくすために、PFC(力率改善)回路を組み込んだ製品も市販されている。ただし、PFC回路を用いたとしても、それに付随する問題が発生する。まず、電力効率が悪くなってしまう。次に、AC100Vを整流してからアップコンバートするので、DC200V程度の電源が内蔵されることになる。こういった高電圧の回路を機器に内蔵することは、機器の安全性の低下につながる。もちろん、電源回路には、高耐圧のコンデンサを用いる必要がある。さらに、せっかくのLEDの長寿命性が、電源の寿命によって損なわれてしまう。コストアップになることも確実である。なお、LED電球は、小型であるため内部にPFC回路を組み込むことはかなり難しい。

 LED照明が、低力率であること、そのために無効電力を生み出しているリスクがあることは、環境面で見ればマイナスの材料になる。今後、LED照明の市場導入がますます進んでいくことは明らかだ。ということは、LED照明に起因する無効電力の増大は、将来大きな社会問題になる可能性がある。また、LED照明のちらつきによる健康被害は、早急に解決すべき問題でもある。

短所をカバーするには?

 LED照明の長所を生かしつつ、その短所もカバーするにはどうすれば良いのだろうか? この問題に対して、筆者からの提案を示そう。スイッチング電源の弊害でもある無効電力を、小型のLED照明によって有効利用するのである。このアイデアを生かして、低価格で製造できる36灯のLEDライトを試作した(図2)。黄色の線で囲んだ部分が電源部である。この電源部は、ラジアル部品で回路を組んでも20mm×30mm程度の面積に収まる。次回は、このLEDライトの詳細について紹介する。

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