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ADIがMEMS慣性測定ユニットを発売、光ファイバージャイロを上回る精度を実現

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 アナログ・デバイセズ(ADI)は2011年11月、東京都内で記者会見を開き、同社のMEMS技術を用いたジャイロ(角速度センサー)や加速度センサーとDSP「Blackfin」、高性能アナログICなどで構成した高精度の慣性測定が可能なユニット製品に関する説明を行った。3軸ジャイロ、3軸加速度センサー、3軸地磁気センサー、圧力センサーを備える10自由度のセンシングが可能な「ADIS16488」と、1軸ジャイロを搭載する「ADIS16136」の2製品があり、両製品とも光ファイバージャイロ(FOG:Fiber Optic Gyro)と同等以上の角速度検知精度を実現したことを特徴とする。既に量産出荷を開始している。1000個購入時の単価は、ADIS16488が1190米ドル、ADIS16136が649米ドル。

図1 「ADIS16488」の回路ブロック図
図1 「ADIS16488」の回路ブロック図 

 米国政府は、ジャイロの精度指標の1つであるバイアス安定性(出力される角速度信号の1/fノイズに関する不規則変動量)を基にジャイロを4つのグレードに分類している。バイアス安定性が0.1度/h以下の慣性グレードを最上位に位置付けており、以下は0.1〜10度/hが2番目のタクティカルグレード、10〜100度/hが3番目のレートグレード、そして100度/h以上が4番目のコンスーマグレードとなっている。同社が販売している個別部品のMEMSジャイロにこのグレードを当てはめると、クワッド差動構造を採用した業界最高レベルの検知精度を持つ『ADXRS450』(関連ニュース1)や『ADXRS800』(関連ニュース2)でも3番目のレートグレードだった。ADIS16488とADIS16136は、ユニットに搭載する複数のMEMSジャイロで検知した角速度信号を、高性能アナログICを用いた信号パスを介してBlackfinによるフィルタリング処理を行うなどして検知精度を向上することによりタクティカルグレードを達成した(図1)。アナログ・デバイセズのMPDテクノロジーグループでディレクターを務める永井詢也氏は、「これまで、タクティカルグレードのジャイロはFOGを用いた製品がほとんどだったが、ADIS16488とADIS16136はそれらよりも小型かつ低価格を実現している。ロボットや製造装置、医療用機器の高精度制御/計測や、無人車やファーストレスポンダ(消防士や救急救命士)のナビゲーションなどの用途に売り込みたい」と語る。

 ADIS16488とADIS16136のもう1つの特徴は、慣性センサーを用いた機器開発のコストや期間を削減できることだ。個別部品のMEMSセンサーなどを使って開発する場合には、機器とセンサーの軸合わせや共振周波数への対応などのノウハウを持った技術者が必要になるし、信号処理回路も独自に設計しなければならない。そして、機器の開発を完了するまでのテストコストも膨大なものとなる。永井氏は、「ADIS16488とADIS16136を用いれば、これらのノウハウや技術は不要だし、テストコストも最低限に抑えられる。先に述べた高精度を求める顧客以外にも、これまで慣性センサーを用いたことがなかった顧客にも利用してもらいたい」と期待している。

 ADIS16488のジャイロの特性は以下の通り。精度指標となるバイアス安定性が6度/h、角度ランダムウォーク(AWR:ホワイトノイズに起因する角度の誤差)が0.3度/√h、ダイナミックレンジが450度/s、ノイズ特性が0.005度/s/√Hzrms。直線加速度の検出性能(gエフェクト)は0.001度/s/g、振動整流性能は0.0001度/s/g2。非線形性は0.01%、バイアス温度係数は0.0025度/s/℃、温度感度係数は35ppm/℃。帯域幅は330Hzで、消費電力は0.7Wとなっている。表1は、これらの特性について、ADIS16488とFOGを搭載する他社品と比較した結果である。ジャイロ以外のセンサーの特性では、加速度センサーは動作時安定性が100μg、ダイナミックレンジが±18g、3軸のアラインメント精度が0.05度である。また、地磁気センサーはダイナミックレンジが±3.5ガウス、圧力センサーはダイナミックレンジが10〜1200mbarとなっている。外形寸法は47×44×14mm。24端子のコネクタインタフェースを搭載している。

表1 「ADIS16488」と他社品のジャイロ特性の比較
表1 「ADIS16488」と他社品のジャイロ特性の比較

 ADIS16136の特性は以下の通り。バイアス安定性が3.5度/h、角度ランダムウォークが0.16度/√h、ダイナミックレンジが450度/s、ノイズ特性が0.0036度/s/√Hzrms。非線形性は0.05%、バイアス温度係数は0.00125度/s/℃、温度感度係数は35ppm/℃。帯域幅は380Hzで、消費電力は0.6Wとなっている。表2は、これらの特性について、他社品の1軸FOGと比較した結果である。外形寸法は、「マッチ箱サイズ」(アナログ・デバイセズ)の36×44×14mm。ADIS16488と同様に24端子のコネクタインタフェースを搭載している。

表2 「ADIS16136」と他社品の比較
表2 「ADIS16136」と他社品の比較

 2製品とも、動作温度範囲は−40〜85℃である。

(朴 尚洙)

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