ルネサス エレクトロニクスは2011年11月、FA(Factory Automation)機器やPA(Process Automation)機器の間を接続する用途で利用されている産業用イーサネット向けの物理層(PHY)IC「μPD60610GA」と「μPD60611GA」を発表した。従来品と比べて、送受信の遅延時間を35%低減したことや、リンク確立時間を1/4に短縮したことなどを特徴とする。2012年1月からサンプル出荷を、2012年4月から量産を開始する。2013年4月時点での量産規模は10万個/月を予定している。サンプル価格は未定。
ルネサスは2009年11月に、産業用イーサネット向けのPHY ICを開発したことを発表している。このときに投入した第1弾製品は2チャネル品だった。今回発表したμPD60610GA/μPD60611GAは、第2弾製品で1チャネル品となる。IEEE 802.3/802.3uに準拠しており、100BASE-TX、100BASE-FX、10BASE-Tのイーサネット通信が可能だ。また、産業用イーサネットの通信プロトコルである、Ethernet/IP、SERCOS III、EtherCAT、PROFINETなどにも対応している。
同社が新たに開発した産業用イーサネット向けのPHY ICは以下の特徴を備えている。まず、送受信回路の最適化により、ホストから受信した信号を次のノードに向けて送信するデータ処理遅延時間(レイテンシ)が同社従来品と比べて約35%低減されており、「業界最小クラスを実現した」(ルネサス)とする。次に、産業用ロボットなどに求められるネットワークの迅速な接続、切断を実現できるように、リンク確立時間を従来比で約1/4に短縮した。そして、通信品質を常時監視するケーブルモニタリング機能や、信号の反射状況を調べてケーブルに発生した問題とその部分を特定するTDR(Time Domain Refraction)機能を搭載することで、高品質な通信とメンテナンスの容易さを実現した。
また、μPD60611GAについては、IEEE 1588 v2(IEEE 1588-2008、関連記事)に準拠した通信が可能である。IEEE 1588 v2では、1ns精度のタイムスタンプを付加したパケットを送受信することで、高精度のクロック同期を行える。このため、複数の産業用機器との同期制御やリアルタイム通信が可能になるという。
その他の仕様は以下の通り。電源電圧は3.3Vで、動作温度範囲は−40〜85℃。パッケージは外形寸法が7mm角の48端子LQFPとなっている。
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