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LED電球を駆動するフライバックコンバータの有用性既存光源からの置き換えを進める原動力(2/4 ページ)

白熱電球などの既存光源をLED電球に置き換える動きが加速している。LED電球のように既存光源との互換性を有するLED照明を実現する上で、重要な役割を果たしているのがフライバックコンバータを用いた駆動回路である。本稿では、LED電球の駆動回路にフライバックコンバータが採用されている理由を解説するとともに、さらなる低コスト化や小型化、多機能化を目的とした開発動向を紹介する。

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心臓部は結合インダクタ

 フライバックLEDドライバの心臓部となるのが結合インダクタである(図1)。インダクタの1次側回路に流れるDC電流を、高電圧対応のMOSFETによってスイッチングする。スイッチがオンの時に、インダクタに流れる電流が増大して、磁界エネルギーが蓄積される。この動作を実現するにはインダクタのコアにエアギャップ(空げき)が必要になる。一方、スイッチがオフになると1次側回路の電流が遮断される。これとともに2次側回路の巻き線に電流が生成され、その電流がダイオードを経由して負荷に出力される。スイッチがオンの時には2次側に電流が流れないので、負荷となるLED素子に連続的に電流を流すには2次側回路に電力蓄積用のコンデンサを組み込む必要がある。


図1 フライバックLEDドライバを用いるLED照明の回路構成
図1 フライバックLEDドライバを用いるLED照明の回路構成 フライバックLEDドライバの心臓部と言えるのが、図の中央部にある結合インダクタである。

 フライバックコンバータを用いる変圧器の場合、インダクタの巻き線比は、変圧器の降圧もしくは昇圧の程度から決めるのが一般的だ。一方、フライバックLEDドライバのインダクタの巻き線比は、スイッチがオフの時に1次側回路の巻き線に生じる、2次側回路の巻き線からの反射電圧を考慮して決定する。

 また、AC電源ラインの電圧がピークになる時、もしくはLED素子に印加される電圧(LED電圧)が最も高くなる時に、MOSFETのドレインに加わる電圧がドレイン‐ソース間電圧の最大定格値を超えないようにしなければならない。なお、MOSFETのドレインに加わる電圧は、DC電源ラインの電圧と反射電圧(LED電圧に巻き線比を乗算することで求められる)の和と等しい。MOSFETのドレイン‐ソース間電圧としては、120VのAC電源ラインを用いるのであれば400V以上、交流入力電圧が277VACの電源を用いるのであれば650V以上が望ましい。MOSFETがこういった仕様を満たしていれば、2次側回路の巻き線の巻き数が少ない、実用的なインダクタを採用できる。

図2 白熱電球との互換性を有するLED電球
図2 白熱電球との互換性を有するLED電球

 フライバックコンバータでは、インダクタによるエネルギーの蓄積と放出が繰り返されるので、その動作は磁化曲線(磁束密度と磁界強度で表わされるヒステリシス曲線)のうち一つの象限内に限られることになる。これは、動作が異なる他の電源トポロジと比べると、出力電流が大きくなるほどインダクタのコアのサイズが大きくなることを意味している。このためフライバックコンバータは、電力容量が50W以下の電源に適していると言われている。LED電球(図2)やLEDを用いたダウンライトに代表される互換式LED照明の電力容量がおおむねこの範囲内に収まっていることもあって、フライバックLEDドライバは広く利用されているのである。

 なお、フライバックコンバータは大きな電力容量の電源回路にも適用できるが、複数のインダクタを用いたり、MOSFETのインターリーブ動作が必要になったりして回路設計が複雑になる。

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