外資FAE歴十数年、でも英語は苦手。そんな私が伝授します!:英文データシートを“読まずに”活用するコツ(1)(2/2 ページ)
日本人の技術者にとって、英語の壁は低くありません。こんなことないですか?海外の半導体メーカーの日本語Webサイトで見つけた技術資料。PDFを開くと、全部英語。そっとファイルを閉じる……。こうした英文資料とどう付き合うか。決して英語が得意ではない筆者が、日々の業務を通して編み出した方法をお伝えします。
文字よりも数字を見よう
最初にお伝えするコツはこれ、「文字よりも数字を見よう」です。
半導体製品のデータシートを開くと、多くの場合、冒頭のページに概要や特長などがまとめられています。ここには通常、その製品のメリットや競合優位性がたくさん、“英語”で書かれています。いきなり気が重くなりますね。
ただ、そうした文章としてまとまった記述がある場合も、特に重要な特長については、文章とともに“数字”が記載されているのです。そこで、まずは特長の欄に書かれている数字に注目することをお勧めします。
例えば、標準的なアナログスイッチICである「DG408」の英文データシート(クリックでPDF形式のファイルが開きます)を見てみましょう。冒頭の「General Description(概要)」欄には英文がびっしりですがここはとりあえず無視しておきます。目線を右に移して「Features(特長)」欄にいきましょう。オン抵抗やチャージインジェクションの値が目に入ったと思います。
・Low On-Resistance, 100Ω Max
・Guaranteed Low Charge Injection, 15pC Max
ここから、このアナログスイッチICは、オン抵抗とチャージインジェクションを特長として打ち出した製品だということが分かります。ICの採用を検討する段階では、「なぜそのICを採用すべきか」、すなわち「他の選択肢に比べて優れているポイントは何か」を素早く把握することが重要です。もしFeatures欄の数字を見てそうしたポイントを全く見いだせないなら、優先的に検討すべき製品ではないと判断できますから、General Descriptionの長文を読み込んで理解する手間が省けます。
DC-DCコンバータ制御ICのデータシート例 通常、データシートの1ページ目には、その製品の特長をまとめた「Features」の欄が設けられています。まず、そこに記載された“数字”に注目してください。 (クリックで画像を拡大します)
他の例として、標準的な電源ICとオペアンプICのデータシートも見てみましょう。昇圧型DC-DCコンバータ制御IC「MAX668/9」(クリックでPDF形式のファイルが開きます)を見てみると、起動電圧の1.8Vや電源電圧範囲の1.8〜28V、効率の90%超といった値が目に飛び込んできます。確かに、昇圧型の電源回路を設計する際には、起動電圧と効率の検討は欠かせません。これらの値は、制御ICを検討する際に最初の“ふるい”になり得ます。
・1.8V Minimum Start-Up Voltage
・Wide Input Voltage Range (1.8V to 28V)
・Efficiency over 90%
オペアンプIC「MAX4231」(クリックでPDF形式のファイルが開きます)はどうでしょうか。出力ドライブ能力や消費電流などの値が記載されています。その一方、このFeatures欄ではAC特性がそれほど多く取り上げられていません。具体的には、GB積とスルーレートくらいで、入力静電容量やセトリングタイムなどの項目が見当たりませんね。ということは、この製品は比較的低周波での増幅に適していることが想像できます。
・ 200mA Output Drive Capability
・1.1mA Supply Current per Amplifier
その数字は保証値、標準値?
先ほど、「まずは数字を見よう」と提案しましたが、この数字には注意しなければなりません。
上に例として挙げたアナログスイッチICでは、オン抵抗やチャージインジェクションの値の後に“Max”と書いてありました(100Ω Max、15pC Max)。これは、これらの値がこの製品の電気的特性としてしっかり保証されている値だということを示しています。
ところが、これとは異なり、数字の近くに“Max”やMin”といった記載が無い場合もあります。そのときは、面倒でもデータシートのもっと後ろにまとめられている電気的特性の欄(Electrical Characteristicsなどと表記されています)を見て確認してください。Features欄の数字は標準値(Typical、Typ.)であって保証値ではないという場合もあり、そのまま設計に使えるとは限りませんので、注意が必要です。
Profile
赤羽 一馬(あかばね かずま)
1995年に日系半導体メーカーに入社。5年間にわたって、アナログ技術のサポート/マーケティングに従事した。2000年に外資系アナログ半導体メーカーのマキシム・ジャパンに転職。現在は、フィールドアプリケーション担当の技術スタッフ部門でシニアメンバーを務めている。
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