“エジソン以来の発明”と称される有機EL照明:いまさら聞けない次世代照明技術(2/2 ページ)
低消費電力という理由から、LEDとともに次世代照明として期待されている有機EL照明。ここでは、有機ELの発光原理と、有機ELがもたらす5つの価値について解説します。
有機EL照明がもたらす5つの価値の創造
ここからは、有機EL照明がもたらす新しい照明の可能性について紹介します。
人と空間を包み込む明かり(広範囲に最適)
これまで照明といえば、点や線の光源で空間を照らすものでした。面だと感じていた照明も、厳密には複数の点や線の光源を面状の照明カバーで覆ったものです。点の光源は本来、スポットライトなど狭い範囲を集中的に照らすのに向いています。
一方、面の光源は広い範囲を照らすのに向いていて、線の光源である蛍光灯は両者の中間に位置します。有機EL照明は、照明器具に依存することなく、それ自体が面で発光する初めての照明です。つまり、有機EL照明によって、広範囲を均一に照らすのに適した照明が、ようやく誕生したといえるでしょう。
ほかにも、面の光源であることで、ぎらつきが少ない光で目に優しい、省スペース化が見込めるなどのメリットがあります。またデザイン観点では、面状のインテリアと相性が良く、壁やテーブルの面、さらにはカーテンや衣服が照明になる、そんな驚きの明かりが可能になるかもしれません。
薄く軽くスリムな明かり(ガラス1枚分の薄さで、設置スペースも最小限)
有機EL照明は薄くシンプルな構成が特徴です。発光部はわずか1/10000mmであり、照明デバイスとしての厚さは基板となるガラスやプラスチックの厚みとほぼ等しいといえます。実際の設置をイメージすると有機ELの薄さはさらに際立ちます。
例えば、蛍光灯は線で発光するため、広いスペースを照らすために光を拡散する板を用います。その分、器具が厚くなり、さらに発熱があるため空きスペースも必要です。一方、面で発光する有機EL照明は、光源そのものが広い範囲を照らす機能を持っています。また軽量・薄型で、発熱も微少であるため、拡散用の器具が不要で、空きスペースも少なく抑えることができます。クルマや飛行機の内部などスペースが極めて限られた照明への利用が期待されるほか、ポスターのようなサイン照明なども誕生するかもしれません。
曲げられるアートな明かり(照明デザインの自由度が向上)
有機EL照明は、ほかの照明にない、曲がるという特徴を持っています。現在、発光層を支える基板にはガラスを用いた開発が多く進められていますが、これをプラスチックフィルムなどの基板にすることで、フレキシブルに曲がる照明が実現できます。薄く、フレキシブルに曲がることで、デザインの自由度が格段に向上するため、有機EL照明は照明デザイナーはもちろん、インテリアデザイナーからも大きな注目を集めています。
デザイナーの斬新な発想によって、これまで予想もしなかったフォルムの明かりが、続々と登場しそうです。さらに、2)の「薄く軽くスリムな明かり」でも触れたクルマや飛行機の内部のように、複雑な形状の面に張り付けるように照明を設置できるのも大きなアドバンテージとなるでしょう。
そばに置ける優しい明かり(熱に敏感な商品も、近くから美しく照らす)
有機EL照明は発光効率が良く、また、面で発光するため白熱灯はもちろん蛍光灯と比べても、単位面積当たりの発熱は極めて微少です。これによって、熱によるダメージから照明の制限が厳しかった生鮮食品、皮革製品、また絵画などを近くから美しく照らすことができます。冷蔵庫内での使用や、有機ELの面状の照明に直接生鮮食品をディスプレイするなど、これまで不可能だった光の演出が増えそうです。
環境に優しく、人、自然と調和する明かり(省電力)
発光効率の面で高いポテンシャルを持つ有機EL照明は、まだ開発が始まったばかりの現段階で、蛍光灯とほぼ同等の発光効率を実現しています。また面で発光するため、実際に照明器具として実用化される際のロスも少なく、省エネルギー、CO2削減が全世界的に急がれる中、有機EL照明の実用化に期待が寄せられています。
蛍光灯は水銀を含みますが、日本国内では廃棄後85%以上がリサイクルされずに埋め立てられています。水銀はRoHS指令(EUによる特定物質の使用制限指令)でも特定有害物質に指定されていますが、代替物質の未開発を理由に蛍光灯は例外措置を受け、使用が続いています。一方で有機EL照明は、廃棄時に有害となる物質を使用していません。次世代の地球を照らすのにふさわしいクリーンな照明です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.