液晶テレビのLEDバックライト、ディミング技術はこうなっている:いまさら聞けないデジタル技術の仕組みを解説(1/2 ページ)
液晶テレビのバックライトは、今やCCFLよりもLEDが主流になりつつあります。本稿では、LEDバックライトの機能の一例として、ディミング技術を解説します。
液晶(LCD)テレビには、視聴者に画像を提供するための仕組みとしてバックライトが不可欠です。現在、液晶テレビのバックライトには、従来のCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp:冷陰極蛍光ランプ)に代わり、LEDが採用されるようになってきました。
LEDは、CCFLに比べ電力効率が優れており、加えて柔軟なデザインや機能を搭載できる、といったメリットがあります。今回は、バックライトにLEDを用いた一例として、“ディミング技術”(以下、ディミング)を紹介します。
ディミング技術とは
液晶テレビは、暗いシーンなど、実際にはバックライトが必要ない場面でも常に100%の状態で点灯しています。よってバックライトおよびディスプレイの温度は時間が経過するにつれて上昇します。LEDの放射熱による温度変化は、液晶の伝送特性に影響を与えてしまいます。こうした電力特性があることから、液晶テレビのバックライト輝度(消費電力)は制限されています。
ディミングは、平均的なバックライトの電力を減少しながら液晶テレビの伝送能力(動画ゲイン)を向上するため、結果として認知される光量は変えずに、画質を高めることができます。
ディミング技術の仕組み
要素αでバックライトの輝度を減らすことで、消費電力をさらに削減する。
バックライトの電力/α = μ×バックライトの輝度/α
削減されたバックライトの輝度は、関係する動画データの増幅により相殺できる。
出力動画データ = 入力動画データ ×(バックライトの輝度)1/gamma
= (入力動画データ × α1/gamma)×(バックライトの輝度/α )1/gamma
低電力化は、常に求められている課題の1つです。そして、バックライトの電力削減も例外ではありません。例えば、ディミング技術を搭載していない一般的な46インチ液晶テレビのバックライトの電力が約240Wだとすると、同じ液晶テレビに使用される小型信号ボードの消費電力は15W程度です。それだけ、バックライトの電力が、液晶テレビ全体の電力割合の大部分を占めるということです。
テレビには直接式(direct-lit)のバックライトと側面式(side-lit)のバックライトがありますが、大画面のディスプレイでは必要な輝度レベルを実現するために、大きさに比例して、より多くの光、電力を消費します。
また、多くの動画画像には、明るい画素がまったく、もしくはほとんどないことから、コントラストを増幅できる余地があります。これらの画像では、目に見える形で画質に影響を与えることなく、すべての画素をゲインによって増幅できます。それにより、ディスプレイ(テレビ)に何らかの処理を施さなくても、より高いコントラストと輝度を得ることができます。
ただし、すべての画像にこのようなコントラストを増幅させる余地があるわけではないので、適用するゲインは画像のコンテンツに合わせて処理する必要があります。また、最適な画質を生成するには、標準的な輝度ヒストグラムの生成と分析では不十分なため、厳密なヒストグラムの生成と画像の分析が求められます。
ゲインによって高められた輝度は、バックライトの輝度を落とすことで相殺できます。これにより電力が節減されるだけでなく、画像の暗い部分からの光漏れが減るため、動的なコントラストも向上します。通常、バックライトの平均的な消費電力削減率は33%ですので、例えばバックライトの消費電力が200Wであれば、およそ66Wの電力削減となります。
バックライトの強さはPWM(Pulse Width Modulated)信号によって、制御できます。信号はACBC(Adaptive Contrast and Backlight Control)ブロックで生成され、LEDの電流レギュレータ回路を制御します。バックライトの輝度は0〜100%の範囲で制御できます。
ドライバのデザインによって10〜25%の範囲でしか制御できない従来型のCCFLと比較して、消費電力は低くなり、動的なコントラスト比も高くなります。これはLEDに固有の特性です。
また、環境光をセンサーで測定する環境光適応ディミングとACBCを組み合わせることで、さらに消費電力を減らすことが可能です。環境光が少ない場合、バックライトの最大出力は低くなり、アルゴリズムは環境センサーレベルで設定されている最大値より低い電力範囲のみを使用します。
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