「ステッピングモーター」で学ぶエンコーダの活用法:エンコーダの基礎から応用(最終回)(3/3 ページ)
エンコーダを使えば、送った制御信号の通りにモーターが回転しているかどうかはもちろん、モーターの負荷の状態も確認できます。「ステッピングモーター」を事例に、エンコーダを使った具体的な回路例を解説します。
「リニアアクチュエータ」と組み合わせて使う
一方のリニアアクチュエータは、図6のようにステッピングモーターやボールねじ、リニアガイド、リニアステージから構成されており、一般に各種工場内の製品搬送や、製品加工などの水平方向の移動に使用されています。
モーターによる回転動作をリニアステージの水平移動に変換しているのは、1本の軸に通常のねじと同じようなねじ山が刻まれている、ボールねじと呼ばれる部品です。ねじ部分とリニアステージ部分が接触しているため、モーターが回転してボールねじを回転させると、ねじ回転にそってリニアステージを水平方向に移動させることができます。
ステッピングモーターは1パルスで回転する角度が決まっており、一方でボールねじのねじ間隔も決まっています。例として、ねじ間隔を1mmすると、モーターが1回転しますとボールねじも1回転しますので、リニアステージは1mm動く事になります。その上で、使用するステッピングモーターが1パルス当たり1.8度回転すると仮定すると、200パルス送ると1回転するので、1mm水平に動くことになります。100パルスでは1/2回転なので0.5mm、1パルスでは0.005mmの水平移動となり、非常に簡単に水平方向への移動制御ができます。
しかし、ここでもステッピングモーターの弱点が影響してきます。本当に狙った通りの水平移動をしたのかが分かりません。そこで、エンコーダを利用し、モーターの回転を監視します。まず、リニアステージにエンコーダを配置し、リニアガイド側に金属製のリニアスケールを取り付けます。エンコーダの出力信号は長いケーブルでコントローラに接続されますので、信号安定性を重視してラインドライバーICを介して、RS-422準拠でA、B、I相のパルス出力を差動出力としてレシーバICに伝送します。差動形式にすることで、伝送の途中で雑音が混入しても、雑音を相殺することができます。また、ラインドライバー出力を採用することでケーブル距離が長くなっても安定した出力を得ることができ、規格上は200mもの信号伝送が可能です。
逓倍(ていばい)回路が搭載されたエンコーダを使えば、容易に分解能を上げることができます。例えば、基本分解能が約0.084mmのとき、4逓倍することで、約0.02mmピッチ相当のパルス信号を出力できます。さらに、エンコーダからのA相、B相出力信号の立ち上がり/立ち下がりエッジを使用することで4倍の分解能を作ることが可能で、外部分周回路によって約0.02mmの出力パルスを約0.005mmピッチに変換することができます。
ますます活躍範囲の広がる「エンコーダ」
「エンコーダの基礎から応用」と題した本連載も今回が最終回です。本連載の冒頭で、「エンコーダはニッチな製品かもしれません」と説明しましたが、少しは興味を持っていただけたでしょうか。エンコーダが果たす役割は、今後も増えていくと思います。また、新しい機能が追加されたり、特性の向上したエンコーダの新製品も続々と製品化されています。本連載では、その一例として当社(Avago Technologies)が製品化している、逓倍(ていばい)回路を内蔵した3チャネル出力の反射型エンコーダICを紹介しました。新たな品種の登場で、これまでエンコーダを採用する機会がなかった分野への進出も始まっています。
今回の連載で、皆さまのエンコーダに対する興味が増えたのでしたら、これ以上嬉しいことはありません。何かご不明なことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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