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もう一つのコンバータ、フライバック超入門! イチから覚える電源回路(7)(1/2 ページ)

今回紹介するのはフライバック、いわゆる昇圧型のコンバータです。ここでは、インダクタの電流が断続する場合と連続する場合の2パターンについて解説します。

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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



 前回はLEDドライバを例に取り上げ、Buck Converter(降圧型)の動作を見てきました。アプリケーション特有の制約がありましたが、中でも入力電圧の下限は負荷電圧よりも高くしなければならないという制約は、どうしても避けられないことが分かりました。

 前々回「電源にやさしい回路とは」で紹介した充電器回路(図1)では、コンバータ入力電圧が整流ブリッジの出力そのままで、低い入力電圧の領域でも所望の負荷電圧を確保できるように動作することが求められています。これを実現するのが今回紹介するFly Back Converter(昇圧型)で、変圧器の励磁インダクタに蓄積する磁気エネルギーを積極的に利用する回路となっています。

図1 充電器コンバータ部
図1 充電器コンバータ部

 まず、図2にインダクタLを用いた回路を示します。これは変圧器を励磁回路だけと見なしたことと等価です。この回路はBuck-Boost Converterといい、文字通り入力電圧を昇降圧ができる回路です。

図2 Buck-Boost Converter回路
図2 Buck-Boost Converter回路

 LEDドライバ回路ではLの電流が連続している場合を説明しましたが、この回路はむしろLの電流を断続させて昇圧する場合が多いです。もちろん、Lの電流を連続して使うこともできます。

 FETがONすると電源Ed→L→FETのルートで電流が流れ、インダクタLにエネルギを蓄積します。次にFETがOFFしたとき、Lの電流がDを経由し、キャパシタを含む負荷回路へ電力を押し込みます。

 それでは、Lの電流が断続する場合と連続する場合を順に説明します。

1. 電流断続モード

 図3に各部の動作波形のタイムチャートを示します。

図3 各部波形タイムチャート(電流断続)
図3 各部波形タイムチャート(電流断続)

 FETがONすると、Lの電流は直線的に上昇します。ON時間のデューティをDとすると、時間DTの後、電流は最大値ILmaxに達します。そしてFETをOFFすると負荷電圧によってインダクタはリセットされ始め、時間δT後に0に復帰します。これは入力電源に蓄積されたLの電気エネルギーがすべて負荷に注入されたことになります。

 図3を見ると、インダクタ電圧VLはFETのONしているときの電圧Edと時間DTの積はFETのOFFしているときの電圧EBと時間δTの積に面積が等しく、双方を加算すると0となります。

  Ed・DT+EB・δT=0 

 ∴δ=−D×Ed/WB     (1)  

 また、ILmaxは

  Ed=L×ILmax/DT

 となることから、

  ILmax=Ed・DT/L     (2)

 ここで、出力電流Ioはダイオードを通って流れる電流(三角形)の平均値に等しいので、

  Io=δ×ILmax/2     (3)

 (3)式に(1)(2)式を代入すると、

  Io=−Ed^2D^2T/2LEB     (4)

 従って、EB/Ed=−(D^2/2)(Ed・T/L)(1/Io)     (5)

 (5)式より出力電圧と入力電圧の比(EB/Ed)はコンバータの体格を決める(Ed・T/L)と目標とする出力電流Ioの割合で大枠は決まります。制御手段であるデューティDを変えることにより枠内で所望の電圧、電流に調節できるようになります。(Ed・T/L)の値は運転周期Tの間のすべてのFETをONさせた場合に流れる電流ピークの値です。設計目標の出力電流Ioに対してどのくらい大きく設計するかということです。

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