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DSPとパソコン用プロセッサの違いイチから学ぶDSP基礎の基礎(3)(2/2 ページ)

今回は、DSP発展の流れを追いながら、DSPとパソコン用プロセッサとの違いをお話します。

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・そしてパソコン用プロセッサの能力はかつてのDSPを上回る

 その後のDSPとパソコン用プロセッサを比べてみましょう。TIのDSP「TMS320C6713(以下、C6713)」とインテルのCPU「Pentium 4」の大まかな仕様の比較を表2に示します。

 C6713とPentium 4の設計ルール、内蔵メモリ容量はほぼ同程度です。厳密な比較はできませんが、おそらく乗算演算の処理能力にも極端な違いはないと見ていいでしょう。両者ともに100MHzをはるかに超える動作クロックで、かつてTMS320C30で行っていた処理などは、軽々とこなします。乗算処理速度だけを比較するなら、Pentium 4はかつての最新浮動小数点DSPを超えています。

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・DSPの低消費電力性

 注目すべき点は、Pentium 4は動作クロック周波数が高いものの、C6713よりもはるかに消費電力が大きいことです。試しに動作クロック1MHz当たりの消費電力(消費電力[W]÷動作クロック[MHz])を計算してみると、その違いがはっきりします。

 表2に示したように、同一クロックでPentium 4はDSPの50倍もの消費電力を必要とするのです。周知のとおりPentium 4は、DSPが必要としない大型のヒートシンクや空冷ファンが必須です。

 これはパソコンだから許されることであって、機器組み込み用のDSPに空冷ファンを取り付けることなど許されません。

・まだまだDSPとパソコン用プロセッサの相違は大きい

 先に述べたように1980年代後半にはパソコン用プロセッサにも浮動小数点演算ユニット(一種の乗算器)が搭載され、DSPとの機能の差が縮まったように見えました。しかしその後もDSP/プロセッサはそれぞれ異なる進化の道をたどってきました。

 細かく調べればそのほかにも重要な相違点がいくつもあるのですが、消費電力だけを取ってみても、現代のDSPとパソコン用のプロセッサの違いは明らかでしょう。

 半導体技術の進歩によりプロセッサの機能を向上させることが容易になったものの、それぞれの目的に適合した設計をした結果、やはりDSPとパソコン用プロセッサは異なったものとなったのです。

 遠い将来を見通すことは困難ですが、これからもDSPがデジタル信号処理向けの専用プロセッサとして設計された特質を生かして、他の汎用プロセッサとは独立した地位を保ち続けることは間違いないと思われます。

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