影のごとく付きまとうノイズ:超入門! ノイズ・EMCを理解しよう(2)(2/3 ページ)
今回は、電気と磁気の関係について解説します。また、自分自身からのノイズで機械の誤動作を引き起こす事象なども紹介します。
現代のEMC――私たちを取り巻くノイズとは?
前回の話の中で、ノイズはいろんな機器で発生していることに触れていますが、電磁気の発生は使う側が意図していなくても、その機器を使用することで必然的に副次的に発生してしまいます。電気・電子回路に電流が流れて場が発生し、外に漏れ広がるものや、そもそも通信の目的で電磁波(電波)を出す機器などがあります。
また、地球上には遠く宇宙から飛来してくる電波、雷などの自然現象などがあり、地上で電磁波が存在しない世界というのは有り得ないので、それらも含めてうまく付き合っていくしか方法はありません。
これらの電磁波が強いレベルで何の規制もなく盛大に放射されてしまうと、現代の世の中の生活はまったく成り立たなくなるでしょう。それ故、前回でお話した無線通信の保護だけでなく、ほかの機器に電磁気環境的に悪影響を与えない、また、ほかの機器から悪影響を受けないようにそれぞれの機器の仕様を定める必要があります。
例えば自動車、医療機器など、人命に直接かかわる可能性のある機器は誤動作しないように配慮されています。私たちが普段使う器具でも、誤動作を起こすと危険なものもありますから、安心して使える環境を構築し維持することが、現代では求められています。現在社会では、事は単にノイズでは済まされないのです。
デジタル時代とEMC
いまやちまたはデジタル機器でいっぱいです。いつごろからか、デジタル時代などといわれ、いまではかなり定着した感があります。それなりの年齢の方はその時代変遷を自ら目の当たりにされたことと思います。
例えば音楽では、アナログ時代はレコード盤で、そのレコード盤に刻まれた溝を先のとがった針でなぞって振動させ、発電機と同じ原理で発電して音を出していました。それに対して、CDという媒体が1980年代中盤から登場し、あっという間にレコード盤から主流の座を奪ってしまいました。
このCDというのはデジタル方式で音楽などが記録された媒体で、アナログとはまったく違う方式です。そして、いまやテレビもデジタル時代を迎え、2011年7月には長い歴史を持つアナログ放送は終了することになっています。
もともと、デジタルはコンピュータの世界で使われたのが実質的には初めてだと思います。最初は巨大な装置で世間で使うレベルではなかったのですが、電卓が出てあっという間に世の中に普及しました。電卓もデジタルで計算しています。
では、デジタルとは何でしょうか? 文字通り、数字、ということになるのですが、ほとんどは数字の0と1の組み合わせで構成します(2進数)。0(ない)と、1(ある)の、2つの単純な値の組み合わせなのであいまいさがなく、機械で計算や処理するには非常に都合が良いということで、これまで用いられてきました。
この0と1は電気で表せます。電気(電圧)「なし」(または低い)は0、「あり」(または高い)は1、という具合です。このあり・なしは、はっきりと区別できることが必要で、あいまいな表し方だと判別できなくなります。
一般的には、電圧がある値より高い場合を1、それより低い場合を0と見なします。それと一定間隔で規則正しく0と1が並んでいることが重要でそうでないと正しく判別できません。これがクロックと呼ばれているもので、一定間隔で0・1を出すようにコントロールしています。
さて、この電圧を形で見ようとすると、横軸を時間、縦軸を電圧の変化としたグラフを作成するとある形が得られます。これを波形といいます。電池などのきれいな直流は変化がないので横線1本となります。デジタルの1は一定時間電圧があり、0は一定時間電圧がゼロ(低い)なので、形は角が直角な矩形(くけい)になります。
この形も角が崩れた山なりの形では判別しにくいので、できるだけ角が立った四角い形が望ましいとされます。きれいな四角い波形、しかし、ここにノイズが潜んでいるとは……。
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