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ノイズはコントロールするという考え方が大事超入門! ノイズ・EMCを理解しよう(3)(1/3 ページ)

ノイズが発生したら、具体的にどのように対応すればいいのでしょうか。今回は、ノイズ対策の考え方について解説します。

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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



 前回までは、電気・電子機器を使用すると副次的に電磁波が発生する、それらの中にはノイズとなってしまうものがあるとお話ししました。では、そのノイズに対してはどうすればいいのでしょうか?

そもそもノイズは消すことができるのか?

 取りあえず設計して、それからノイズが出ているかどうか確かめて、出ているようなら対策する、というやり方がかなり以前は当たり前でした。ところでそれら出てきたノイズは完全に消し去ることは可能でしょうか?

 実はやろうと思えばですが可能なのです。あくまで、測定器で測れる限界まで消す、という意味です。これからその話をしていきますが、よくノイズの話を分かりやすくするために、音やにおいに例えて話をします。今回の場合、音に例えてみましょう。

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画像1 フェライト

 皆さん無響音室という部屋をご存じでしょうか? まさに音のない世界になり、表に音が漏れることもなければ、周囲より音が入ることもありません。そのような部屋を電磁的に作ればいいのです。それに近いのが電波暗室になります。

 フェライト(酸化第二鉄を主原料としたセラミックス磁性体(画像1)と呼ばれる電磁波を吸収する素材でできたタイルのようなものと、ほかの電磁波吸収体で全6面(または床を除いた5面)を覆っている部屋(画像2)がそうです。

 ではなぜ、皆さんノイズの問題に悩むのでしょうか?

 皆さんの携帯電話が電波を通さないフェライトという石みたいなものに覆われていたらどうでしょう? それはもはや携帯電話ではなく、重いすずりを持ち歩いているのと変わらないでしょう。電波を外に出すこともできないので機能せず何もできない、しかし高価で重たいだけのものとなります。機能を満たしコストや利便性を追求するとノイズが出てくるのです。

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画像2 電磁波吸収体で床面を除いた5面を覆っている部屋

ノイズ対策の考え方

 以降は分かりやすいように電磁波を表に出してしまう放射ノイズ(EMI)について話を進めていきます。余計なエネルギーを持っていると必ず放射ノイズは出てくるのです。100%エネルギーを伝達できるのなら、基本的にノイズは発生しないはずです。消費されるエネルギーが0だからです。現実はそうはいかないので出てしまったノイズに対して対策を打っていかなければいけません。

 それではノイズ対策の基本的な考え方を音に例えて考えてみましょう。

1)音自体を小さくする

 余計なエネルギーがノイズになるのであれば、必要以上に音を出さなくすればよいのです。例えば、本人以外に聞こえないくらい小さな声で話すとかなどです。しかし人によっては聞こえないなどあり、例えば相手がお年寄りなどの場合、大きな声で話をする必要があると思います。その隣によく聞こえる耳のいい人がいた場合、その人にとってその話はノイズとなり不必要なものになります。

 電気に話を戻すと、信号の電圧レベルを小さくする、電流を小さくすることでノイズをある程度抑えることが可能です。しかしそうすることで遠くまで信号を電送できなかったり、転送スピードが遅くなったり、あるところには信号が伝わらなかったりします。

 性能・機能を満足するためには、なかなかこれだけでノイズを抑えることは困難です。しかし、最初から必要以上に大声を張り上げるのは論外ですので、電気的にも初めから必要以上に大きな電流を流さないとか工夫することは非常に重要であり、そこからスタートすべきことは、いうまでもないと思います。

2)音を完全に外に出さない

 出てしまったものをほかに広げない。冒頭引用しました無響音室がそれに値します。では皆さんの家において音楽を聴く部屋をすべて無響音室にできるでしょうか?

 それは非常にお金が掛かる話になります。仮に作れたとしても、空気の入れ替えをどのようにするか、人の出入りはどのようにするか、外部との連絡をどのように取るかを考えなければいけません。電気の世界でも同じです。皆さまのDVDレコーダを考えてください。周囲を完全に囲ったとして、内部の放熱はどのようにするか、DVDの挿入はどのようにするか、TVとの接続はどのようにするかがそれに当たります。

 ということで、これも万全ではなく必要最低限にすべき項目になります。当然窓を開けっ放し、壁の薄いアパートなどでガンガン音楽をかけていれば何らかの処置をしないと周囲の住人に怒られてしまいます。1つの方法ではあるけれど、せめて窓を閉める程度が一般的な対策として関の山なのです。

 昨今家電の下落が著しく、必要以上にコストを掛けられないのも追い討ちをかけています。機能にあまり関係のないことで例えば、外部に放射される電磁波が少ないということを売りにしたDVDレコーダを高く売っても、誰も買うことはないでしょう。そのようにコストとの兼ね合いもEMCでは切っても切れない項目となります。

3)音を周囲に広げない

 それでは、コストを掛けずに部屋の中で音楽をガンガン聴く方法はあるでしょうか? まさに余計なところに音を広げないようにすればいいのです。ヘッドフォンがそれに当たります。ヘッドフォンで聴くのは嫌いという論議はさておいて、要は必要な人以外に音を伝達させないようにできればいいのです。

 では、電気の話に戻して、果たしてヘッドフォンはあるのでしょうか? ヘッドフォンは音をいったん電気信号に変換して、その先の小さなスピーカーで音に戻して伝達します。ですので、ヘッドフォンのケーブルから音が漏れることがないのです。 電気的にはというと、光ケーブルなどがそれに当たります。いったん電気信号を光(別なエネルギー)に変えて伝達し、再度電気信号に戻して伝達します。そうすることでケーブルから電磁波が漏れることはなくなります。果たしてそれが万能でしょうか?

 よく満員電車などでシャカシャカ音漏れを起こしている人が多く見られます。変換後に漏れてしまっては、やはりそれもノイズなのです。また、ヘッドフォンは安価に入手できますが、すべての信号を光に変換することは非常に高価な対策になります。現代では現実的な解とはいえないでしょう。 そこで、せめてスピーカーで音を広げることをやめましょうということが、実際の対策になります。それは、アンテナとなり得る個所に余計なエネルギーを伝えない方法を考えるということを意味します。

 この後説明する基本4要素を活用し、余計なエネルギーをアンテナに伝達させないようにする基本的なEMC設計の考え方を見ていきましょう。

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