ノイズはコントロールするという考え方が大事:超入門! ノイズ・EMCを理解しよう(3)(3/3 ページ)
ノイズが発生したら、具体的にどのように対応すればいいのでしょうか。今回は、ノイズ対策の考え方について解説します。
基本4要素の話
EMC設計を考慮するうえで基本となる4つの項目があります。それはそれぞれ以下の項目になります。
(1)シールド
安定電位で囲うことによって周囲にノイズをまき散らさない、または周囲から影響を与えられないようにする。あるいは電磁吸収シートなど使用したシールドの場合、熱変換して余計なエネルギーを小さくする。
(2)反射
反射してノイズを通さないことによって不要な個所にエネルギーを伝えない、または周囲からの余計なエネルギーを内部に入れない。
(3)吸収
余計なエネルギーを熱変換し吸収することでノイズのレベルを下げる、または周囲からの余計なエネルギーを吸収することで内部を保護する。
(4)バイパス
余計なエネルギーを分離することによって不要な個所にエネルギーを伝えない、または周囲からの余計なエネルギーを分離することで内部に入れない。
第1回の「そもそもノイズとEMCってなんだ」にて記述をしていたように、EMCはElectromagnetic Compatibilityのことで、電磁気的両立性とか電磁環境両立性と訳されます。両立性とは「音の漏れやすい家は音が入りやすい家でもある」とイメージすれば簡単でしょう。
ということで、一概にいえませんがノイズの出しやすさと入りやすさに両立性があるといえます。上記の4要素はノイズを出さなくするための基本でもありますが、ノイズを入りにくくする基本でもありますので、常にイメージしておく必要があります。また(3)吸収以外はエネルギーの減衰がない(厳密にいえば少ない)ということも重要なポイントです。(2)反射にて反射したエネルギーはどこに行くのか? (4)バイパスにて分離したエネルギーをどこに持っていけばいいのか? などを考慮しながらEMC設計をしましょう。
何事も最初が肝心。初期に考えないと変更が効かない!
上記で記述した基本4要素に基づいて、いざ、出ているノイズの対策をしようとお考えの方! 実際対策していくと、必ず2つの大きな壁に当たることになります。その壁とは「時間」と「コスト」です。
実際に出てしまっているノイズ、例えば外部につなぐケーブルからノイズが出ているとしましょう。実際にはフェライトコア(画像5)といわれるものをケーブルに巻いて終わりということも多くありますが、そのケーブルはユーザーが勝手に買ってくるものだった場合、その対策は打てません。
それでは管理できる本体側での対策となりますが、いざ部品を入れたくても「変更している時間がない」とか、「基板を設計し直すとそれまでに掛かったコストや信頼性試験などのコストが倍になる」など、ものすごい労力が掛かる話になります。
次にシールド板などですべて覆ってしまう場合でも、安定電位を保てるのか初めから考慮しなければ、単なる浮いている金属でしかなく役に立ちません。結果として導電性を取るために周囲に導電性のテープを張ったりする必要が出てきます。初期の試作コストが少しでも、量産の製造コストとしては人件費という大きなコストが掛かります。
ここではシールド板自体で接点を持つようにと変更を試みますが、その場合にも「金型代が掛かる」や「納期が掛かる」など、やはり2つの壁に当たります。しかし、本当に初めから分からなかったのでしょうか? シールドがグランドから浮いているとノイズを広げてしまうことは、大抵の場合想像できます。ケーブルがつながるとノイズが出てしまうかもしれないということも、初期の段階で想像できます。そのような事態に対して最初からリスク管理しておくことが重要なのです。これが、ノイズをコントロールするという考え方なのです。英語ではEMC Controlといわれていることからも明白です。
今回は、ノイズを音に置き換え概念的にノイズ対策を考えていただきました。その中でノイズ源はどこか、アンテナはどこかを実際に対策する前に検討することを推奨しました。対策は基本4要素について記述し、それらを初期の段階から検討する重要性、すなわちノイズ対策からEMC設計への意識移行について記述いたしました。
次回は、今回解説しました基本4要素に対応するEMC対策部品や実際の使用例などについて解説します。また、将来起こり得るEMC問題について簡単に提起します。
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