波形が正しく見えない!? ……甘い詰めが誤差を増す:いまさら聞けないオシロスコープ入門(3)(2/2 ページ)
周波数帯域もサンプル・レートも問題ないからといって、詰めが甘くては意味がありません。“最後の詰め”とは何なのか、いつものようにクイズを交えながら解説します。
下図はワニ口グランド・リードの悪影響により、50MHz以上の周波数を測定した場合、本来1Vのはずの振幅が20〜50%もの誤差を生じる例です。サイン波の観測において、せいぜい50MHzくらいまでの周波数でしか使えません。
たとえ500MHzの周波数帯域をうたうプローブであったとしても、これ以上の周波数においては、ワニ口グランド・リードをあきらめ、専用のアダプタを使うことが必須です。「500MHzとうたい、ワニ口グランド・リードを標準で付属しておいて、何をいう」とお怒りにならず、その原理を知り、それを避ける手法を知りましょう。
多くの受動プローブの入力は入力抵抗Rp=10MΩ、入力容量Cp=10pFの並列回路を形成します。この容量とグランド・リードのインダクタンスLgが直列共振を起こします。
物理現象ですので避けることができません。しかし、2つの解決策があります。
解決策1:長さの短いグランド・アダプタを使用する
長さの短いグランド・アダプタの例です。
これらのアダプタを使用することにより、プローブのうたう最高周波数帯域までの測定が可能になります。
解決策2:入力容量の小さなプローブを使用する
入力容量を10分の1くらい小さくすることにより、この問題を大きく改善したプローブがアクティブ・プローブや差動プローブです。100MHz以上の周波数において、15cmほどの長さのグランド・リードを使用しても、正しい測定ができます。短いグランド・アダプタと併用することにより、GHzを超える測定も可能となります。
リード線による延長が波形を変形
針形状のプローブの先端を直接測定点に接続できればいいのですが、それができないことがままあります。プローブの入らないほど狭い場所に接続しなくてはならない場合は、プローブの先端から測定点までをリード線により延長して接続することがあります。
これも要注意です。前述のように、リード線のインダクタンスとプローブ入力容量の直列共振が起きます。これにより波形が大きく変形します。プローブの先端を延ばした場合は、実波形にはない大きな共振が生じオシロスコープが正しくない波形となります。これに対しては、直列共振回路に抵抗器を挿入し、共振をダンプして変形を抑える手法が効果的です。共振がダンプされ、波形をかなり改善することができます。
長い入力リードの扱いで波形が変形
高電圧を入力できる差動プローブなど、フローティング測定に適したプローブは入力部に長い入力リードを持つ構造です。この手のプローブは入力リードの扱いにより、特性が変化します。下図のように、2本のリードを軽くねじった状態においては、規定された最高特性が出ます。
しかし、距離の離れた2点間に接続する場合は2本の入力リードをねじることができません。2本のリードを離したままでは、数十MHzを超えない測定にとどめなければなりません(次回に続く)。
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