デジタル・オシロスコープは不完全!?:いまさら聞けないオシロスコープ入門(4)(1/2 ページ)
アナログ・オシロの進化形であるデジタル・オシロですが、アナログ・オシロに劣る面はないのでしょうか。
デジタル・オシロスコープが失ったもの
問題です。デジタル・オシロスコープはアナログ・オシロスコープが進化したものだから……
- すべての面で、アナログ・オシロスコープをしのぐ
- ほとんどの面でアナログ・オシロスコープをしのぐが、1つだけ劣る面がある
答えは「ほとんどの面でアナログ・オシロスコープをしのぐが、1つだけ劣る面がある」です。特別なモードを除き、オシロスコープは波形の一部を切り出し、表示しては、また切り出し、表示するという動作を断続的に繰り返しています。地震計のように切れ目なく連続して波形を描き続けているわけではありません。
つまり、1つ切り出してから次の切り出しまでに時間が空くのです。この空白の時間にどんなに大事な現象が起きていたとしても、切り出せないのですから、オシロスコープで見ることができません。この見ることができない時間(デッド・タイム)がデジタル・オシロスコープでは非常に大きいのです。この点に関しては、デジタル・オシロスコープはアナログ・オシロスコープより劣ります。
非常にまれに発生する異常信号をイメージしてください。このような異常信号が見えるためには、異常信号が発生する瞬間とオシロスコープの切り出しタイミングが一致しなければなりません。
異常信号にトリガを掛けることができない限り、異常信号の発生とオシロスコープの切り出しタイミングは非同期(時間関係がない)なので、タイミングが一致するかどうかは確率に基づきます。デッド・タイムが大きければ大きいほど、タイミングの一致は困難で、確率的に低くなります。つまり、デジタル・オシロスコープでは「間欠異常をとらえる力」が欠落します。
デッド・タイムは波形の見た目にも大きくかかわります。切り出された波形は画面に表示されるのですが、最初明るく、だんだんと暗くなるように描かれ、一定時間(数十ms)後には波形は画面から消えてなくなります。次から次へと切り出された波形が高速に描写・減衰・消滅を繰り返せば、画面は濃淡(階調)のある豊かな表現となります。
頻度が高く波形がなぞる部分はいつまでも明るく、たまにしか波形がなぞらない部分は薄暗く表現されるので、濃淡による波形の微妙な挙動さえ見て取れます。アナログ・オシロスコープはこれができます。片や、デジタル・オシロスコープは大きなデッド・タイムのせいで、基本的に一筆書きのような薄っぺらな表現しかできません。
描写・減衰・消滅の一連動作において減衰時間を長くすることにより、濃淡をそれらしく見せるデジタル・オシロスコープもあります。しかし、長いデッド・タイムの減衰時間を長くすることによりごまかした濃淡表現は、微妙な挙動(頻度)の表現はできません。
DPOの登場
デッド・タイムが大きいことによる2つの問題を解決したのが、DPO(デジタル・フォスファ・オシロスコープ)と呼ばれるオシロスコープです。デッド・タイムをアナログ・オシロスコープ並みに最小化することに成功し、「間欠異常をとらえる力」と「濃淡による頻度情報」を取り戻すことができました。
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