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製品の熱設計、その方法で大丈夫ですか?熱設計の本質(1/2 ページ)

今回は、熱が製品に与える影響について解説します。

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@IT MONOistで掲載された記事を転載しています



熱と電流とその流れ道

 電気回路に電気を供給する(=電子に移動エネルギーを与える)と、電子が移動を開始して電流が流れますが、電流=熱(=エネルギーの移動)と考えることもできます。ただし電子の流れる方向と熱の流れる方向は一緒ですから、電流の流れと熱の流れは方向が逆になります。電子は移動中にほかの電子や原子にぶつかり、その際にエネルギー授受が行われます。

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図1 電子の移動

 従って、電気の流れ道は温度が上がるのが普通です。電子の移動があまりにも速いとほかの電子・原子との衝突が多くなります。すると、エネルギーを得た電子・原子の運動が激しくなるので、衝突機会がますます増加します。そして、限界を超えると流れ道が焼け切れることになります。こうならないように基板のパターンや抵抗器などは、許容電流や許容電力を決めています。

半導体における電子の流れと熱

 半導体ではどうでしょうか? 一番簡単なダイオードで考えてみましょう。順方向に電流を流すとp型半導体にプラス、n型半導体にマイナス電圧を加えることになり、ホールと電子がpn接合部方向に動きます。ホールと電子が結合し、消滅するため電流がダイオードに流れることになります。

 しかし、エネルギーを加えて電子とホールを動かしているのに、最後は消滅してなくなってしまうと、加えたエネルギーはどこへ行ったのかという疑問が起こるでしょう。

 エネルギーはなくなったのではなく、電子とホールが結合したときに熱に変わっているのです。従って電子とホールが結合する場所であるp型n型半導体の接合面(=ジャンクション)が熱くなるのです。

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図2 電子が原子に衝突することで新に電子が放出

 では、半導体が許容温度を超えて熱くなるとどうなるでしょう。半導体の許容温度を超えると電子が思い切り原子や分子にぶつかるため、原子・分子が分解されて電子が放出されます。さらに電子が増えてぶつかる回数が多くなり、半導体構造が破壊されていきます。こうならないように、電子部品には許容温度が設定されているのです。

熱から見る電子機器

 こうして電子機器を熱の観点から見ると、電子機器とは、「回路という抵抗体に電流を流し、その抵抗体でエネルギーの大部分を熱として消費しながら、能動部品(半導体)で残りの電気エネルギーを熱に変えることで最終的に情報を作り出す機械」と見ることができます。

 情報はエネルギーを伝えませんから、使った電力は100%熱に変換されるといってもいいでしょう。この熱で電子機器内部の温度は上昇し、発熱源との温度差(=ポテンシャル)が小さくなるため、熱の流れる能力は小さくなってしまいます。この状態で半導体が破壊温度にならないように制御することが、熱設計の目的ということになります。

製品開発はあらゆる「熱設計」の集合

 ここまで熱が製品に影響することと、熱設計の目的を簡単に説明しましたが、もう一度整理すると、「熱設計は電子機器が動作状態において、各部品の許容温度を超えないようにする設計」ということになります。

 具体的には、製品を構成する各部品の許容温度を把握して、製品動作時の各部品温度を推定し、その温度が部品許容温度以上にならないようにする設計全体を熱設計といいます。

 消費電力がすべて熱になるので、消費電力を下げることも熱設計ですし、筺体(きょうたい)内部温度上昇を抑えるための構造設計も、推定温度に耐える部品を選定するのも熱設計です。

 またCPUの特定個所に動作が集中しないようにソフトを組むことも熱設計といえますし、想定される温度上昇で加わる熱膨張差を考慮した部品パッドの設計も熱設計です。熱設計はそういう意味でジャンルを問わない設計であり、製品を開発する各部門が協力して対応するべき問題です。

 製品開発に必要な技術には、ほかにも部門間にまたがる共通課題があります。例えばEMC対策技術もそうですし、はんだ付け技術もそうです。そしてそれぞれの技術課題も互いに関連し合っていて、それを限られた時間・コストで解決しなければならないので、実は製品開発はとても大変な作業です。

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