いつかは通る道――長文セクションの読解は“順番”が鍵!:英文データシートを“読まずに”活用するコツ(5)(2/2 ページ)
今回は、「英文データシートを“読まずに”活用する」という連載のテーマを少し踏み外し、データシートの中でも特に豊富な情報が盛り込まれた――ただし英語の長文で――セクションにちょっとだけ触れてみましょう。データシートの内容は通常、ある“順番”に沿って記載されているので、必要なところをまず押さえるのがコツです。
“流し読み”でもかまわない!
まずは完全に理解しようとはせず、とりあえず“流し読み”してみましょう。きっと、分かる単語だけでも、電源シーケンスに関する大まかな要件はつかめるはずです。
まず、2行目に「The digital supply must be powered up first.」とあります。うん、これは分かる。デジタル用電源(DVDD)を最初に立ち上げなさい、と言っていますね。続けて、「The analog supply should not be powered up for at least 250μs (typ) after the digital supply has been powered up.」ときました。ちょっと長いですが、この手の文章はたいていの場合、「after」や「before」などの時間的なタイミングを示す単語で区切って分解してやると、理解しやすくなります。
ここでは、「after」の前の部分が「アナログ用電源は最低250μs(標準値)の間、立ち上げてはいけません」、それ以降が「デジタル用電源が立ち上がった後で」と読めます。なんとな〜くニュアンスがつかめますよね。先ほど「デジタル用電源が一番最初!」と言っていたのですから、アナログ用電源はそれより最低でも250μs後に投入しなさいってことですね。
オフ時のシーケンスも忘れずに
これに続く文章では、この250μsの間にICの内部で何が行われているのかを説明しているようですが、これは後で必要になったら読みましょう。今は飛ばして次、次!! ということで次は電源遮断時のシーケンスです。これはPower-up and Power-Downの項目の最後に書いてありました。「For power-down, AVDD must be powered down first to 0V, and then DVDD can safely be powered down.」とのこと。つまりは、先ほどの逆ですね。アナログ用電源のAVDDをまず0Vに落としてから、DVDDをオフにしなさいと言っています。これらの電源シーケンスを守れば、ICはちゃんと動作し、所定の性能を発揮できるはずです。
おっと、電源部分ではバイパス用のコンデンサが必須なので忘れないでください! ほとんどの半導体製品のデータシートには、端子配列や標準動作回路のセクションにバイパスコンデンサの値が記載してあるはずです。万が一、記載がなかったら……まだ手はあります。メーカーに評価キットの回路図をリクエストしてみましょう。その回路図にはバイパスコンデンサが必ず入っているので、その値を参照すればよいのです。
パスコンの値を忘れずに確認 MAX9669のデータシートの「Pin Description」の項目です。3系統の電源それぞれについて、所要のバイパスコンデンサの値が示されています。 (クリックで画像を拡大します)
Profile
赤羽 一馬(あかばね かずま)
1995年に日系半導体メーカーに入社。5年間にわたって、アナログ技術のサポート/マーケティングに従事した。2000年に外資系アナログ半導体メーカーのマキシム・ジャパンに転職。現在は、フィールドアプリケーション担当の技術スタッフ部門でシニアメンバーを務めている。
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