「教育現場でも本物の波形観測を」、テクトロニクスが4万円台のオシロを発表:テクトロニクス TBS1000シリーズ
テクトロニクスの「TBS1000シリーズ」は、教育機関、電子機器の設計部門などをターゲットに、4万〜13万円台のオシロスコープを発表した。同社のエントリーレベルの従来機種と共通の部品を使用することで価格を抑えている。「学生に正しい信号計測を知ってほしい」(同社)と話す。
テクトロニクスは2012年11月28日、教育機関など向けに、価格を4万〜13万円と大幅に抑えたエントリーレベルのデジタルオシロスコープ「TBS(Tektronix Basic Scope)1000シリーズ」を発表した。帯域幅が25〜150MHzの間で異なる5機種を用意しており、最低価格は25MHz機の4万8700円、最高価格は150MHz機の13万8000円となっている(税別価格)。同社の担当者は、「テクトロニクス史上、最も低価格のオシロスコープだ」と述べる。
教育機関、個人用途、汎用的な電子回路の設計部門などを広くターゲットにしているが、それらの中でも特に、学生たちを対象にしているという。大学や専門学校などの教育現場では、高価なオシロスコープを何台も購入するのは難しい。そのため、安価なオシロスコープを使用したり、実物ではなくオシロスコープのシミュレータを利用したりしているという。ただ、価格があまりに低過ぎる機種だと、信号の波形を正しく観測できない場合があるとテクトロニクスは指摘する。同社の担当者は、「エンジニアを目指す学生は、日本のモノづくりを担う人材だ。正しい波形観測を学べるよう、学生のころから“本物”のオシロスコープを使ってほしい」と語る。
TBS1000シリーズの機種と価格、具体的な仕様は表の通りである。
TBS1000シリーズは、テクトロニクスのエントリーレベルの従来機種で、市場にも広く普及している「TDS2000シリーズ」と共通の部品をいくつか使用することで価格を抑えた。特に、最もコストのかかるA-Dコンバータのチップについて、TDS2000シリーズと同じ物を使うことにより、低価格化を実現できたという。ちなみに、TDS2000シリーズの最下位機種で帯域幅が50MHzの製品は、価格が10万円以上となっている。
またTBS1000シリーズは、ユーザーインタフェースもTDS2000シリーズを踏襲している。学生のころからTBS1000シリーズの扱いに慣れておけば、メーカーなどの就職先でTDS2000シリーズが導入されていた場合、入社したばかりでもスムーズに使えるようになるというのが、テクトロニクスの狙いである。
4万円台でも汎用機としては十分な機能
価格は抑えつつ、教育現場や、汎用オシロスコープとして使う場合には十分な機能を標準で備えている。例えばエッジトリガ、パルス幅トリガといったトリガ機能、一定期間にわたってトリガ時に捉えた波形をUSBメモリに保存するデータロギング機能、FFT(高速フーリエ変換)機能などだ。
さらに、オシロスコープの初心者向けに、プローブを補正する機能や、用語の意味を表示するヘルプ機能もある。付属品として、オシロスコープの基礎が学べるコンテンツが入ったCDも提供する。
この他、「OpenChoice Desktop」というソフトウェアも標準でインストールされている。これにより、オシロスコープとPCをUSBケーブルで接続すれば、簡単にデータを移行できるようになる。「最近はセキュリティ面からUSBメモリを使用できない企業もあるので、このような機能を設けた」(テクトロニクス)。もちろん、USBメモリを使ってデータを移すことも可能だ。
テクトロニクスは、TBS1000シリーズの価格について、「エントリーレベルのオシロスコープの裾野を広げるための戦略的価格付けである」と説明している。目標の販売台数について具体的な数値は明かさなかったが、「やはり3〜4桁の台数を販売しなければ売り上げを出すのは難しい」(同社)と述べている。
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