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電流信号をコピーする! カレントミラー回路をマスターしようオペアンプ+トランジスタ“ちょい足し”回路集(9)(3/3 ページ)

オペアンプICに個別トランジスタを“ちょい足し”して性能を高めたり機能を拡充したりできる定番回路集。これまで何度か、電流信号を扱う回路について解説してきました。回路を設計していると、この電流信号を多くの部分で使いたい時があります。今回は、トランジスタを使って電流信号を“コピー”する方法を紹介しましょう。

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増幅もでき、D-A変換への応用も可能

 カレントミラー回路は同じ値の電流をコピーするというコンセプトですが、実は使用するトランジスタのエミッタ面積を変えるとコピーする電流の比率が変わります。トランジスタの飽和電流はエミッタの面積に比例しますから、式(1)と式(2)で示したように同じVBEで動作するためには、コレクタ電流が変わります。

 例えば、リファレンス電流用トランジスタのエミッタ面積の2倍の面積を持つトランジスタを従属させれば、そこにはIrefの2倍の出力電流が流れます。面積を小さくすると、その比率が逆になります。これを利用したものが電流出力D-Aコンバータの分流回路です。

 このタイプのD-Aコンバータを図3に示します。左端のトランジスタQCのベースとコレクタにリファレンスバッファアンプと抵抗を付けて、高精度の基準電圧源を接続すると、QCにリファレンス電流(Iref)が流れます。そのトランジスタに従属する4個のトランジスタは、エミッタ面積がそれぞれQCの8倍、4倍、2倍、1倍の比率になっています。従って、Irefに対するそれぞれの電流比もこれと同じ比率になります。この電流を電流スイッチ回路(図の上の部分)で切り替えてやれば、4ビットの電流出力D-Aコンバータとして機能します。

図3 電流出力型の4ビットD-A変換器回路
図3 電流出力型の4ビットD-A変換器回路 クリックで画像を拡大

 この回路の重要なポイントは、基準となる電流を制御するトランジスタの特性が、温度変化などでドリフトしても、従属するトランジスタの特性も一緒にマッチングして変化するので、出力電流のドリフトが抑えられるということです。James Pastorizaという人が、40年近い昔にコンバータ用に考案した方法で、特許にもなっていました。

 この回路により、高精度D-Aコンバータの実用性が大幅に進歩しました。かつては、この回路をほぼデイスクリートに近い構成で作っていた時代もありましたが、今では抵抗などの周辺素子も含めて、完全にモノリシック化されています。


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