LED照明をマイコン制御でもっと賢く、光品質・電力効率・コストを改善:LED/発光デバイス LED照明(1/3 ページ)
LED照明の制御方式がアナログからデジタルに移行しつつある。デジタル制御ではマイコンとソフトウェアで照明を制御するので、1種類のハードウェアで仕様の異なる照明システムを実現できる。またLED照明の品質を高めつつ、消費電力とコストを低減することが可能になる。
発光ダイオード(LED)を採用した照明(LED照明)の普及が進みつつある。LED照明では、制御方式と駆動方式を工夫することで、照明のエネルギー効率を高められる。このため、住宅や事業所などで光熱費の上昇を抑えることができる。
調和の取れた照明を実現することは当然のことであるし、調光やバランス調整、色再現などの高度な制御機能を実装することも、LED照明では標準的になりつつある。さらに照明システムそのものが故障を自己診断してその結果をリモート接続で遠隔地に出力する機能も、実装することが多くなってきた。リモートの故障診断機能は、照明システムの保守費用を抑制する。保守エンジニアを現場に派遣する回数を減らせるからだ。
LED照明システムをより高度なものにするには、LEDの制御方式と駆動方式を変更する。機能が固定されたアナログの制御と駆動から、マイコンをベースとするデジタルの制御と駆動へとアーキテクチャを一新する。パワーエレクトロニクス向けのマイコンは、照明用電源の制御はもちろんのこと、照明の制御機能や通信機能などを備えている。このため、照明システムをより効率的で低コストなものにできる。
このようにマイコン制御、すなわちデジタル制御へと照明システムが移行することで、制御設計の柔軟性が高まり、照明製品の差異化とインテリジェント化を実現しやすくなる。
LED照明の応用分野と照明器具
LED技術が有する数多くの利点は、照明工業を急速に変革しつつある。ただし、LED照明の可能性を広げるには、必要とするサポートの範囲もまた広大になる。
住宅用照明分野のLED照明には、電球の置き換えやスポット照明、小型屋外照明などの用途がある。これらの照明器具では搭載するLEDの数がそれほど多くない。LEDを直列接続したモジュール(LEDストリング)の数は、1本あるいは2本で済む。低コスト化の要求が強いので、高度な制御機能を実装する余地はほとんどない。
商業用照明分野では、LED蛍光灯やLED電球、スポット照明などの用途が考えられる。この用途でも、必要なLEDストリングの数は1本または2本というのが一般的である。この分野では低コスト化のほかに、消費電力の低減も要件に含まれる。ハイエンド品ではリモート接続機能や、高度な制御機能などが要求されるだろう。
エンタテインメント用照明分野には、ハイエンドのディスプレイや間接照明などの用途がある。この分野ではアナログ的な調光機能(フル調光機能)や、用途に適した演色表現機能、リモート接続機能などが必須になる。リモート接続では、照明用通信プロトコルの標準仕様「DALI(Digital Addressable Lighting Interface)」と「DMX512」をサポートする必要がある。
屋外照明およびインフラストラクチャ照明には、街路照明や工場の照明、大規模オフィスビルの照明などが含まれる。この分野では数多くのLED素子とLEDストリングを使う。LEDは標準タイプではなく、高輝度タイプを採用することが多い。リモート接続は標準仕様であり、高度な制御方式を要求することが少なくない。
LED照明をマイコンベースで制御する
LEDを使った最も簡単な照明システムは、機能を固定したLED駆動ICを使う。この方式は簡素でコストが低く、消費電力が低い。またソフトウェアプログラムは不要である。LED駆動ICの選定と、外付けの素子による設定に、いくばくかの手間を要する程度で済む。
LED駆動ICは簡単に使える一方で、高度な照明システムを実現するだけの柔軟性に欠ける。与えられた用途でLEDのタイプを変更したり、LEDストリングの本数を変えたりといった設計変更には、1種類のLED駆動ICでは対応しづらい。ほとんどの場合は、LED駆動ICも換えることになる。これはLED照明製品の開発企業にとっては、機種ごとにLED駆動ICを別々に用意することを意味する。製品の品種数を増やすことはLED駆動ICの種類と在庫管理の手間を増やすことにつながり、コスト低減の妨げとなる。
これに対し、マイコンベースのインテリジェントな制御・駆動方式は、設計の柔軟性を高める。ハードウェアを変更せずに、さまざまなタイプのLEDと異なるLED数のストリング、多様なLEDストリング数、特殊な電源条件などに対応できる。マイコンに搭載するソフトウェアプログラムを書き換えることで、こういった設計変更に対応するからだ。
インテリジェント化した制御・駆動回路ではさらに、駆動対象のLED素子を自動的に検出する機能を載せることもできる。複雑な調光機能やスケジューリング機能などを搭載できるので、高度な照明シーンを演出したり、光量を自動調節したりといった機能を備えた照明システムを実現可能だ。
こういった柔軟性は、1種類の制御ハードウェアで仕様の異なる派生品を開発可能にする。制御IPを再利用することで、設計コストを大幅に削減できる。流通在庫の種類と管理の手間を減らすとともに、量産効果によるコストの低減を円滑に進められるようになる。
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