電源フィードバック回路の絶縁素子とエラーアンプを集積、過渡応答特性も向上:ADI ADuM3190/ADuM4190
アナログ・デバイセズは、電源装置のフィードバック回路に用いられている、フォトカプラとシャントレギュレータを代替可能な絶縁型リニアエラーアンプ「ADuM3190/ADuM4190」を発表した。ICパッケージへの集積による小型化の他に、消費電流の低減や、負荷変動に対応する過渡応答特性の向上が可能になる。
アナログ・デバイセズは2013年2月、電源装置のフィードバック回路に用いられている、フォトカプラとシャントレギュレータを代替可能な絶縁型リニアエラーアンプ「ADuM3190/ADuM4190」を発表した。ICパッケージへの集積による小型化の他に、消費電流の低減や、負荷変動に対応する過渡応答特性の向上といったメリットが得られるという。絶縁定格が2.5kVrmsのADuM3190は既に量産出荷中で、絶縁定格が5kVrmsのADuM4190の量産出荷は2013年4月から始める。1000個購入時の単価は、ADuM3190が1.04〜1.23米ドル、ADuM4190が1.20〜1.39米ドル。評価ボードの「EVAL-ADUM3190EBZ」は、49米ドルで販売している。
PCや産業機器などの電源装置は、搭載機器の負荷変動に合わせて送出する電圧や電流を制御するためにフィードバック回路を搭載するのが一般的だ。このフィードバック回路では、制御に必要な信号を送信しつつも、電源装置の大電流を流さないために、フォトカプラなどの絶縁素子を組み込む必要がある。
アナログ・デバイセズは、MEMS技術を用いてICパッケージの中に作り込んだトランスで絶縁を実現する素子「iCoupler」を展開している。しかし、iCouplerは、デジタル信号にしか対応していないため、電源装置のフィードバック回路に入力されるアナログ信号を絶縁する用途には利用できなかった。
今回発表したADuM3190/ADuM4190は、フィードバック回路に入力されるアナログ信号を処理するエラーアンプの回路(動作周波数10MHzのオペアンプや1.225Vの高精度電圧リファレンスで構成)などを集積しつつ、iCouplerの製造技術で作り込んだトランス構造によって入力側と出力側の絶縁を実現している。「フィードバック回路に用いるエラーアンプを、絶縁素子とともに4×5mm角のICパッケージに収めた例は他にない」(アナログ・デバイセズ)。ICパッケージへの集積化により、フォトカプラとシャントレギュレータで構成する回路と比べて、最大25%の小型化とコスト削減が可能になるという。
ADuM3190/ADuM4190は、iCouplerの製造技術で作り込んだトランス構造で絶縁を実現している。このため、LEDの光をフォトディテクタで受けて信号を伝えるフォトカプラよりも絶縁のために用いる消費電流が少なくて済む。フォトカプラとシャントレギュレータで構成する回路の消費電流が20mAであるのに対して、ADuM3190/ADuM4190は7mA以下にとどまる(電源電圧が5Vの場合)。
また、フォトカプラとシャントレギュレータで構成する回路の場合、最大ループ帯域幅が25kHzに制限されてしまう。このため、電源機器の接続先の負荷変動に対して、十分な過渡応答を行うには外付け部品による工夫が必要になる。一方、ADuM3190/ADuM4190は、最大ループ帯域幅が400kHzと広いので、容易に過渡応答特性を確保できる。
iCouplerの製造技術で作り込んだトランス構造が、フォトカプラのように経年劣化や効率劣化が起こらないこともメリットになる。これらの他、動作温度範囲が85℃までのフォトカプラに対して、ADuM3190/ADuM4190は125℃までの動作を保証しているという。
その他の仕様は以下の通り。25℃における初期精度は0.5%。−40〜125℃の動作温度範囲で1%の精度も確保している。電源電圧範囲は3〜20V。対応する電源回路の出力電圧は1〜48Vである。DOSA(Distributed-power Open Standards Alliance)規格にも準拠している。パッケージは、ADuM3190が16端子のQSOP、ADuM4190が16端子の広幅-SO。
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