SJ-MOSFETとIGBTをいいとこどり、ロームが「Hybrid MOS」を開発:ローム Hybrid MOS
ロームは、スーパージャンクション構造のMOSFET(SJ-MOSFET)とIGBTのデバイス構造を融合させ、SJ-MOSFETの高速スイッチング特性、低電流性能と、IGBTの高耐圧特性を兼ね備える新型トランジスタ「Hybrid MOS」を開発した。低電流領域から大電流領域までフルレンジでの省エネ化が可能になる。
ロームは2013年4月、サーバや産業機器、家電などの電源やPFC(力率改善)回路向けに、新しいデバイス構造を用いた高耐圧新型トランジスタ「Hybrid MOS」を開発した。機器の大幅な省エネ化に貢献できるという。2013年夏ごろからのサンプル出荷を予定する。
この新型トランジスタは、スーパージャンクション構造のMOSFET(以下、SJ-MOSFET)とIGBTのデバイス構造を組み合わせた新構造を採用した。
SJ-MOSFETは、高速なスイッチング性能や低電流領域での特性に優れ、主に家電などで使用される。IGBTは、高温・大電流領域での特性が良く、産業機器など大電力を必要とする機器のPFC回路などで用いられる。ロームは、SJ-MOSFETのウエハー裏面を制御する技術により、SJ-MOSFETの利点を維持しながら、大電流動作時での効率をIGBT以上に高めたHybrid MOSの開発に成功したという。
これまでSJ-MOSFETを用いていた家電などに適用すると、低電流で動作する定常運転時だけでなく、定格保証に近い領域での大電流動作時でも、高い効率を維持でき、省エネ化が図れる。産業機器など従来IGBTを用いたハイパワー分野でも、高速スイッチングや低電流領域特性に優れるSJ-MOSFETの利点を享受できるため、省エネ化できるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 3216サイズで定格電力1Wを実現、ロームの電流検出用チップ抵抗器
ロームの電流検出用チップ抵抗器「LTR18低抵抗シリーズ」は、3216サイズの長辺電極品である。独自の放熱設計により従来比4倍となる定格電力1Wもの高電力に対応している。 - 新日本無線がSJ-MOSFETを量産へ、デンソーの技術でオン抵抗を半減
新日本無線は、デンソーからライセンス供与を受け、スーパージャンクション構造を持つパワーMOSFET(SJ-MOSFET)を量産する。従来工法のSJ-MOSFETと比べて、単位面積当たりのオン抵抗を半減したことが特徴である。 - SiC-MOSFETの課題克服へ、新材料を用いたゲート絶縁膜で信頼性を向上
SiC-MOSFETの量産採用に向けた課題の1つとして挙げられているのが、酸化シリコンを用いたゲート絶縁膜に起因する動作時の信頼性の低さだ。大阪大学と京都大学、ローム、東京エレクトロンは、AlON(アルミニウム酸窒化物)を用いたゲート絶縁膜によって、SiC-MOSFETの信頼性を高める技術を開発した。