感じることは理解すること〜データシートの頻出英語を覚えよう:パート2:英文データシートを“読まずに”活用するコツ(11)
今回も、前回に続き、電気の世界でよく使われる英語を紹介します。実際のデータシートを引用し、頻繁に使われる英語表現をピックアップして、順番に説明していきます。荒療治かもしれませんが、“英文じんましん”を克服しましょう!!
さて、冒頭からいきなりですが、読者の皆さんに大事なお知らせがあります。
この連載は、今回および次回の2回で終了になります。というのも……私を担当していた編集者が退職してしまうのです(正確には、これが掲載される時点では既に退職しています)。決して、皆さんが押してくださるFacebookの“いいね!”の数が少なかったからではありません!!
ということで、残りわずかになりましたが、どうぞ最後までお付き合いください。
電気設計でよく使う英語:パート2
さて今回も、前回に続き、電気の世界でよく使われる英語を紹介します。
我々が扱っているのは、電気です。電圧、電流、そして抵抗。皆さんがずーっとお世話になっているオームの法則ですよね。「電圧を加える」、「電流を流す」、「抵抗を接続する」というアクションを英語で表現すると、次のようになります。
- 電圧を加える⇒ apply (the )voltage
- 電流を流す⇒ draw (the) current
- 抵抗を接続する⇒ connect a(the) resistor
ですが、このような表現は教科書でこそ多く使われますが、半導体製品のデータシートではまれです。そもそも、「どこに電圧を加えるか」「電流を流すか」が決まってしまっているからです。データシートでは、「これがあーなると、こーなる」とか、「ここの抵抗をこのようにすると、電圧と電流はこのようになる」、「これをするために、あーする必要がある」といった表現が多用されています。
ここでは、データシートをベースにして、頻繁に使われる英語表現をピックアップして、順番に説明していきたいと思います。これは、第2回目で説明した、「Don’t think. Feel!!(考えるな、感じるんだ!!)」の次のステップに相当します。いわば、「To feel is to understand(感じることは理解すること)」ですね!(こちらは筆者独自のフレーズで、映画「燃えよドラゴン」のブルース・リーの教えではありません、念のため)
製品データシートを題材に頻出表現を学ぶ
それでは、まずオペアンプ、次に電源ICを題材にして、電気英語の頻出表現をピックアップしていきたいと思います。
最初はオペアンプICです。ここでは超高速品や高精度品ではなく、一般的な汎用オペアンプを適当にチョイスしてみしょう。ということで、今回は「MAX4245-47」という製品で見ていきます(PDF形式のデータシートが開きます)。
製品詳細(Detailed Description)のセクションに、こんな句がありました。「placing a small capacitor across the feedback resistor」。この「place A across B」は、「Bの間にAを置いてください」という意味です。半導体製品のデータシートでは特に、Aに受動部品が入ることが多いです。
おっと、他にも高い頻度で出てくる表現がありました。「capacitive driver capability」です。この「capability」は、「能力」といったニュアンスの言葉で、この文脈では「負荷容量の駆動能力」という意味になります。オペアンプや電源などを取り扱うとき、「出力電流能力」という言葉を使うことがあると思いますが、英語では「output current capability」といった表現になります。
続けてこのデータシートを見ていくと、最後の方に「as close to the device as possible」という表現が出てきます。レイアウトについて説明するセクションでは本当に頻出の表現です。他に「as close as possible」という書き方もあります。これは、「できるだけデバイスの近くに〜」という意味です。ですから、レイアウトがらみで「close」と「possible」という言葉が表れたら、「ああ、近くに置く必要があるんだな」とすぐにイメージできればOKです。
一般的なオペアンプのデータシートでは、これらの頻繁表現が見つかりました。
多彩な言い回しが英語の鬼門
次に、電源ICではどうでしょうか? ここでは、TFT液晶パネル用電源管理IC「MAX17075」のデータシートを参考にしてみましょう(PDF形式のデータシートが開きます)。
まずは1枚目のページから。「built-in」という表現が3回も出てきます。これは「内蔵」という意味ですが、英語ではこの「内蔵」の言い回しが多彩です。他にも「integrated」や「included」、「internal」、「on-chip」といった具合に、いろいろと言葉を変えて表現します。英語の苦手なエンジニアにとっては、1つの言い回しにそろえてくれた方が嬉しいのですが、英語のデータシートの作り手側は「そうすると、味気が無くなってしまう」と考えるようなんです。
さぁ、気を取り直してもう1ついきましょう。「external resistive voltage-divider」という表現がありますね。これもよく出てきます。同じ意味で、「resistor divider」という表現もよく使われます。「抵抗分圧」ですね。「divider」は「割る」とか「分割する」という意味です。電源とは異なる技術領域でも、例えば信号発生器で「frequency divider(周波数分周器)」というふうに使われますから、お見知りおきを。
さらにデータシートの先に進むと、またいい句が出てきました。「in parallel with〜」です。設計した回路がうまく動作しないときに我々がよく口にする 「コンデンサ、パラったらどうなるよ?」を英語にしたのがこれです。
おっと、「in parallel with〜」を見つけた直後に、素晴らしいタイミングでもう1つ、「in series with〜」という表現を発見しました。これはもちろん、パラレル(並列)の反対であるシリアル(直列)です。この「in parallel with〜」と「in serial with〜」はセット販売みたいなものなのですから、まとめて覚えるのがお買い得です!!
先ほどオペアンプICのデータシートで説明した通り、レイアウトについて説明するセクションではやっぱり「as close as possible」が出てきました。レイアウトのセクションではこの表現が必ず出てくると言っても過言ではないくらいです。
データシートの英文は、このような頻出表現をおさえておけば、たとえ読むのに時間がかかったとしても、何を言っているのか理解が深まると思います。また、これらの決まり文句が頭の中でポッと浮かび上がるようになる頃には、メールなんかも英文ですらっと書けるようになっているでしょう。大丈夫、そうなったらもう、英文じんましんは出ないはずです!!
Profile
赤羽 一馬(あかばね かずま)
1995年に日系半導体メーカーに入社。5年間にわたって、アナログ技術のサポート/マーケティングに従事した。2000年に外資系アナログ半導体メーカーのマキシム・ジャパンに転職。現在は、フィールドアプリケーション担当の技術スタッフ部門でシニアメンバーを務めている。
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