630V定格で「業界最高」の静電容量を達成、TDKがC0G特性の車載用セラコンを拡充:車載電子部品
TDKは、広い温度範囲で静電容量が安定したC0G特性を有する、定格電圧が100〜630Vの車載対応積層セラミックコンデンサについて、製品ラインアップを拡充した。新たに追加した定格電圧が630Vの5750サイズ(5.7×5.0mm)品は、同じ定格電圧の積層セラミックコンデンサで業界最高容量となる100nFを達成している。
TDKは2013年5月16日、広い温度範囲で静電容量が安定したC0G特性を有する、定格電圧が100〜630Vの車載対応積層セラミックコンデンサについて、製品ラインアップを拡充したと発表した。1005サイズ(1.0×0.5mm)品と5750サイズ(5.7×5.0mm)品を新たに加えるとともに、2012サイズ(2.0×1.2mm)以上の製品群で、定格電圧450Vの品種を追加。特に、定格電圧が630Vの5750サイズ品は、同じ定格電圧の積層セラミックコンデンサで業界最高容量となる100nFを達成している。この品種のサンプル価格は100円。2013年4月から月産1億個の規模で量産を始めている。
今回の製品ラインアップの拡充では、誘電体材料の微粉化/高分散化により、誘電体セラミックス層を薄く仕上げられるため、より多くの誘電体セラミックス層を積層できるようになった。これにより、定格電圧や静電容量の向上を実現している。誘電体セラミックス層の厚みは10μm以下と中耐圧の積層セラミックコンデンサとしては極めて薄い。5750サイズ品はこれを250〜300層ほど積層している。
主な用途は、自動車のエンジンECU(電子制御ユニット)、キーレスエントリー、電気自動車やハイブリッド車のインバータ、ワイヤレス充電システムの共振回路など。民生機器や産業機器の電源で高い信頼性が求められる用途にも適している。なお、車載向け受動部品の品質規格である「AEC-Q200」に対応している。
フィルムコンデンサの置き換えが可能
TDKは、車載用に適した高い信頼性を持つ積層セラミックコンデンサとして、−55〜125℃の温度範囲で容量温度係数が0±30ppm/℃以内に収まる、C0G特性を有する製品を展開している。「ECUには約200個の積層セラミックコンデンサが搭載されているが、それらの約10%にC0G特性を持つものが用いられている」(同社)という。
一般的な積層セラミックコンデンサは、高い直流電圧(DC)を印加すると静電容量が低下するDCバイアスが起こりやすい。しかし、TDKのC0G特性を有する車載対応製品はDCバイアスの影響もほとんど受けない
DCバイアス(左)と温度変化に対する静電容量の安定性を示すグラフ。緑色がC0G特性を有する積層セラミックコンデンサ、青色が車載用で一般的に用いられているX7R特性積層セラミックコンデンサ、赤色がフィルムコンデンサである。(クリックで拡大) 出典:TDK
従来、数百Vクラスの電圧を印加する車載システムでは、安定した静電容量を得られるフィルムコンデンサが広く用いられてきた。これを、TDKの中耐圧の車載対応積層セラミックコンデンサに置き換えれば、フィルムコンデンサと同等レベルの安定した静電容量が得られるだけでなく、大幅な小型化も実現できる。例えば、20×15mmサイズのフィルムコンデンサは、TDKのC0G特性を有する車載対応積層セラミックコンデンサの4532サイズ(4.5×3.2mm)品に置き換えられるという。
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