シリアルオシレータの作り方:Wired, Weird(3/3 ページ)
今回はシリアルオシレータの実際の作り方を詳しく説明しよう。製作する基板には搭載部品が少なく簡単な回路だ。しかし、チップ部品を使うので部品をピンセットではさむこととハンダコテの使い方が読者には難しいかもしれない。腕試しも兼ねて、ぜひ、トライしよう!
完成! 動作確認
完成した基板をランチャーライトに装着し動作波形を確認した。図5〜7に示す。
図5は電池電圧が4.5V(単4電池3本)の時の発振波形だ。CH1(青)がQ2のドレイン波形、CH2(紫)がC1の波形である。Q2がオフ時のドレイン電圧は約2.3Vで微小電流時のLEDのVFは電源電圧4.5Vとの差の2.2Vであることが分かる。CH2の波形は1.2V(Q1オン)と0.8V(Q2 FETオフ)の充放電波形であり、1.2Vの値はVcc(2.2V)×1/3 +VBE(0.5V)の計算値とほぼ一致する。0.8VはFET Q2のゲートオフ電圧である。発振の周期は0.95秒(1.06HZ)でライトのオン時間は約0.27秒。オン時間の比率は約28%になった。
図6は電池電圧が3.5Vに下がった時の発振波形。CH2のスケールを0.2V/Divにした。C1の波形が0.84Vと0.7Vの充放電波形となっている。発振周期は1秒を少し超えて、オン時間が0.15秒と短くなっている。電圧が下がると周期が長くなりオン時間は短くなる。
なお、電池電圧を3Vまで下げてもライトは点滅した。図7に示す。
図7でC1にオシロのプロ―ブを当てると発振が停止したため、プローブのCH2はQ1のベースに接続した。
発振周期は1.1秒、オン時間は70ms。さらにオン時間が短くなっている。CH1の波形からVccが0.9Vしかなく、Q2のゲート電圧が0.8V程度と計算されギリギリのオン電圧になっていることが分かる。電池の電圧が下がると、周期が長くなり、点灯時間も短くなるので、電池の交換時期も分かりやすい。
腕も目も鍛えられるシリアルオシレータ製作
15mm角の片面のユニバーサル基板にピンセットでチップ部品を搭載し、手ハンダで製作するのは結構、難しい。しかし、うまく部品の位置を決めれば何とかなるものだ。筆者も当初は、細かい作業のため、拡大レンズを使って製作していたが、今は肉眼で製作できるようになった。かなり目に負担をかけるが、逆に目の筋肉が鍛えられ、おかげさまで老眼にはなりそうもない。
部品コストは30円未満!
この基板の部品代は全部合わせても30円未満である。自作する時は目標の発振周期を決め、抵抗とコンデンサを決める。この回路では長周期の点滅回路も難しくはない。例えば10秒程度の発振周期では抵抗を10MΩのチップ抵抗に変更する。100秒の発振周期ではさらにコンデンサの容量を10uFにすれば良い。使う用途に応じ、基板の大きさや定数を決めて作る。読者もシリアルオシレータの設計と製作にトライしてほしい。
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