車載LAN用コモンモードフィルタを小型化、TDKが容積を半減した新製品を投入:車載電子部品
TDKは、車載LAN規格であるCANやより高速のFlexRayに対応する車載LAN用コモンモードフィルタの新製品として、従来品よりも容積を半減した「ACT1210シリーズ」を開発した。
TDKは2013年11月29日、車載LAN規格であるCAN(Controller Area Network)やより高速のFlexRayに対応する車載LAN用コモンモードフィルタの新製品として、従来品よりも容積を半減した「ACT1210シリーズ」を開発したと発表した。サンプル価格は50円。2013年12月から月産100万個の規模で量産を始める。
ACT1210シリーズの外形寸法は長さ3.2×幅2.5×高さ2.4mmのいわゆる3225サイズである。これに対して、従来品の「ACT45Bシリーズ」は外形寸法が長さ4.5×幅3.2×高さ2.8mmの4532サイズであり、実装面積で約45%、体積で約50%削減されたことになる。
巻き線コイルを用いる車載LAN用コモンモードフィルタは、サイズが小さくなると、特性として重視されるコモンモードインダクタンスで大きな値を実現しにくくなる。コモンモードインダクタンスは、巻き線コイルが巻かれているボビンコアと巻き線コイルを覆う板コアの接触面積や、巻き線コイルの巻き数、ボビンコアや板コアの透磁率によって値が変わる。一般的には、小型化すると、ボビンコアと板コアの接触面積や、巻き線コイルの巻き数は減るので、コモンモードインダクタンスは減ってしまう。
そこでACT1210シリーズでは、まずボビンコアと板コアの接触面積が、ACT45Bシリーズよりも大きくなるような構造を採用した。従来は、巻き線と電極部品を接続する継線接合部がボビンコアと板コアの間に位置していたため、その分だけ接触面積が少なくなっていたが、この継線接合部を部品の下部に移すことで接触面積を増やした。さらに、ボビンコアと板コアに使うフェライトの素材を工夫して透磁率を高めた。これらの対策によって、FlexRayやCANの高速版であるCAN FDなどに利用される、コモンモードインダクタンス(100MHz)が100μHの品種「ACT1210-101-2P」をラインアップすることができた。
なお、この他の品種は、一般的なCANで利用されるコモンモードインダクタンスが51μHの「ACT1210-510-2P」や、同22μHの「ACT1210-220-2P」、同11μHの「ACT1210-110-2P」がある。
また動作温度範囲は、ACT45Bシリーズの−40〜150℃からさらに低温側で広がり、−55〜155℃となった。
別製品だったFlexRay対応品も統合
TDKは、車載LAN用コモンモードフィルタとして、ACT45Bシリーズの他に、FlexRayに対応する「ACT45R」も販売している。このACT45Rは、FlexRayで利用できるよう100μHのコモンモードインダクタンス(100MHz)を備えるとともに、FlexRayの規定をクリアするため直流抵抗をACT45Bシリーズよりも低減した。ACT45Bシリーズの100μH品の最大直流抵抗は2Ωあるが、ACT45Rは1.5Ωとなっている。
ACT1210シリーズでFlexRayに対応できる100μH品のACT1210-101-2Pは、小型化の効果もあってか、最大直流抵抗はACT45Rと同じ1.5Ωである。このため、ACT1210シリーズだけで、CANやCAN FD、FlexRayといった車載LAN規格に対応できるようになった。
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