アクティブバランス調整でバッテリ容量の96%を抽出、リニアのDC-DCコン:リニアテクノロジー LT8584
「LT8584」は、高電圧バッテリスタックのセルバランスをアクティブに調整するために用いるフライバックDC-DCコンバータである。アクティブバランス調整方式は、放電時に容量の大きいセルから小さいセルへと、電荷を再分配するため、スタック全体の容量の96%を抽出できるという。
リニアテクノロジーは2013年12月、高電圧バッテリスタックのセルバランスをアクティブに調整するために用いるフライバックDC-DCコンバータ「LT8584」を発売した。アクティブバランス調整方式は、放電時に容量の大きいセルから小さいセルへと、電荷を再分配するため、スタック全体の容量の96%を抽出できるという。EV/HEVやエネルギ貯蔵システムなどの用途に向ける。
遠隔で電流や温度をモニター
LT8584は、6A/50Vのパワースイッチを内蔵しており、セルの平均放電電流として2.5Aを可能とした。また、絶縁型バランス調整により、バッテリスタックの一番上のセルに電荷を戻したり、スタック内で任意に組み合わせたセルに電荷を戻したり、12Vバッテリに電荷を戻したりすることができる。こうした機能により、蓄積されたバッテリ容量の96%を活用することが可能となる。
これに対して、パッシブバランス調整方式だと、バッテリ容量の大きいセルは、容量が一番小さいセルに合わせて放電し、セル間のバランスを保とうとするため、蓄積したバッテリ総容量の約80%しか抽出できない、と一般的に言われているという。
さらにLT8584は、放電しているセルからの電力供給で動作させることができる。LT8584が機能していない状態のときは、暗電流が最大20nAと極めて小さい。また、ソフトウェアを追加しなくても、イネーブルピンを介して、バッテリスタック電圧モニターIC「LTC680x」ファミリと統合して用いることができる。これによって、電流モニターや抵抗モニター、温度モニターなどのシステム遠隔測定が可能となる。
LT8584は16端子TSSOPで供給され、信頼性設計手法「FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)」と機能安全規格「ISO26262」の両方に準拠している。動作温度範囲は標準仕様「LT8584EFE」に加えて、−40〜125℃対応のインダストリアル仕様「LT8584IFE」、−40〜150℃対応の車載仕様「LT8584HFE」を用意している。1000個購入時の参考単価はLT8584EFEが2.95米ドルより、LT8584IFEが3.25米ドルより、LT8584HFEが3.50米ドルより。
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