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ATX電源の修理 〜2台目〜Wired, Weird(3/3 ページ)

今回、修理するのは基板上の部品の一部が焼損してしまっているATX電源だ。「この電源は修理して大丈夫だろうか?」と気後れするほどの焼損ぶり。でも、焼損の原因を見つけることは非常に重要なことである思い気を取り直し、修理に取り掛かった。

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修理完了のはずが……

 翌日、依頼主から連絡があったがAC電源を入れたがファンが回転しないという内容だった。そんなはずはないと思いながら依頼主のところへ行ってAC100Vを通電して動作を確認したら、確かにファンが回らない。現品を引き取って基板を取出し再確認したら交換したトランジスタのCE間が修理前と同様に短絡し破損していた。トランジスタを再度交換したら正常に動作した。まだ何か隠れた原因がありそうだ。

 ATX電源の参考回路には各電源の過電圧検知と保護回路はあるが過電流保護回路がない。もしDC出力を短絡したらどのような現象が起こるか? 修理品が納入後に動作しなかった理由はここにあった可能性が高い。修理品での再現実験はできないので、トランジスタを再交換し、依頼主に納品して再度確認してもらった。翌日連絡があり正常に動作したということで一応修理完了だ。

本当の原因は??

 さて2台目のATX電源のプラコンが焼損した原因はなんだったのか? またこれを防止するにはどうしたら良いだろうか?

 今までの経緯から原因は2つ推測される。1つはAC200Vを接続した時の電圧自動切り替え回路の誤動作である。1台目の修理では電圧自動切り替え回路のモニターのコネクタが接触不良で倍電圧整流回路を構成するトライアックがオンにならず、全波整流動作になっていたため電源が正常に動作できなかった。これと同様な状況で、もしモニター端子の接触抵抗が100KΩ程度になるとAC200Vを接続した時に逆にトライアックがオンしてしまい倍電圧整流動作になってしまうことになる。この時の一次側の整流電圧はDC560Vになり、プラコンに印加される電圧も耐圧の250Vを超えた280Vになってしまう。これで電源がスイッチング動作するとプラコンに過電流が流れトランジスタも過電力となって破損し、プラコンも過電力で焼損してしまうだろう。

 2つ目の予想される原因は2次側のDC出力の過負荷・短絡である。ATX電源の参考回路をからも確認されたがこの電源には過電流保護回路が実装されていなかった。このため、負荷が過負荷になると電源制御ICのオン時間が長くなり、プラコン及びスイッチングトランジスタの電力が増大し過熱破損する可能性はある。

焼損対策を考える

 それでは、焼損対策はどうしたら良いだろうか? AC電圧をマニュアル切り替える時に、AC200Vの通電で誤ってAC100Vに設定したら同様に電源が焼損してしまうことも考えられる。電源の焼損防止方法は実に簡単だった。図6に簡易な対策回路例を示す。


【図6】簡易な対策回路例

 図6で分かると思うが考え方は簡単である。AC入力にはヒューズがあるので、サイリスタ1個と抵抗2本(赤枠参照)を追加する。一次整流電圧が過電圧になったらサイリスタをトリガさせてオンさせる。これで入力のヒューズは切断され、内部の回路は保護される。サイリスタのモニター電圧を350V程度になるように抵抗の値を決めれば良い。こんな簡易な回路で電源の焼損防止ができる。

 部品の修理を行うと故障状況や修理の結果から不良の根本原因も推測できるようになる。不具合状況とその根本原因を製品の設計や製造へフィードバックすることで、より安定した高品質の製品開発も可能になる。特に焼損事故はさらに大きな事故につながる恐れがあり、あってはならない事故だ。電源製品はより安全で高い信頼性が要求され、これに応えるべく電源の設計・製造にも万全な対応が必要だ。

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