A-Dコン、マイコン、CAN通機能を統合、フリースケールのバッテリセンサー:フリースケール MM9Z1J638
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(以下、フリースケール)の「MM9Z1J638」は、リチウムイオン電池や鉛蓄電池の状態を監視するためのバッテリセンサーである。2次電池の状態をより正確にモニタリングしておくことで、電池の故障を早期に予測することができるという。車載用電子部品向け品質規格である「AEC-Q100」の認証も取得している。
フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(以下、フリースケール)は2014年4月、リチウムイオン電池や鉛蓄電池の状態を監視するためのバッテリセンサー「MM9Z1J638」を発表した。2次電池の状態をより正確にモニタリングしておくことで、電池の故障を早期に予測することができるという。車載用電子部品向け品質規格である「AEC-Q100」の認証も取得している。車載用や産業用のバッテリ監視用途に向ける。
MM9Z1J638は、16ビットマイクロコントローラ「S12Z」やCAN(Controller Area Network)プロトコルコントローラ、A-Dコンバータ、LIN(Local Interconnect Network)インタフェースなどを1つのパッケージに統合している。特にアナログフロントエンドには、独立した3つの16ビット分解能シグマデルタ型A-Dコンバータを内蔵した。このうち2つのA-Dコンバータでバッテリの電圧や電流を同時に計測し、もう1つで温度をモニタリングする。これらの測定結果から、バッテリの充電状態(SoC:State of Charge)や劣化状態(SoH:State of Health)および機能状態(SoF:State of Function)といった、パラメータを算出することで、バッテリの不具合を早期に予測し、事前に対処することを可能とした。
MM9Z1J638は、最大4個のバッテリセルに対応し、最大52Vの入力電圧測定が可能である。外部に電圧分配器を取り付ければさらに高い電圧のバッテリ測定を行うことができるという。また、複雑なアルゴリズムを演算処理するためのマイクロコントローラとしては、32ビットのALUやメモリバス幅を備えたS12Zを内蔵した。メモリ容量はフラッシュメモリを128kバイト(96kバイト品もオプションで用意)、RAMを8kバイト、EEPROMを4kバイトそれぞれ搭載している。さらに、CANプロトコルコントローラ、LINインタフェースなどを組み込み、車載向けネットワークシステムに対応した。AEC-Q100の認証も取得済で、「汎用のバッテリセンサーとしてAEC-Q100認証を取得するのは業界で初めて」と同社は主張する。パッケージは外形寸法が7×7mmの48端子QFNで供給する。参考価格は1万個購入時の単価が3.61米ドル。
フリースケールでアナログ&センサー製品本部の本部長を務める遠藤千里氏は、「アイドリングストップ機能などを装備した車両が増加している。これらの車両には、リチウムイオン電池を中心に予備のバッテリが搭載される。その信頼性を維持するためにバッテリマネジメントICやバッテリセンサーの需要が拡大している」と話す。このため同社は、大手バッテリメーカーが存在する日本や韓国市場での受注獲得に注力していく考えだ。
なお、バッテリセンサーの発売に合わせ、評価ボード「KIT9Z1J638EVM」(188.80米ドル)や、リファレンスデザイン「RD9Z1-638-4Li」(220.80米ドル)も用意している。
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