SPICE応用設計(その4):モンテカルロ解析の設計応用:SPICEの仕組みとその活用設計(15)(1/3 ページ)
今回は前回のモンテカルロ解析の説明に引き続いて、得られた結果を設計にどう応用していくかについて考えていきます。
モンテカルロ解析の結果の応用
前回はモンテカルロ解析と工程能力指数Cpについて簡単に説明しましたが、イメージはつかんでいただけたでしょうか?
今回は前回のモンテカルロ解析の説明に引き続いて、得られた結果を設計にどう応用していくかについて考えていきます。
モンテカルロ解析とは前回述べたように、図1の回路図中における偏差を設定した部品にランダムに偏差を与えて回路の特性がどのように変わっていくのかを統計的に処理し、工程のバラツキ、ひいては工程能力指数Cpを予測するものです。
そしてモンテカルロ解析の結果は図2のような特性曲線群か、あるいは表1のような統計的処理の結果が表示されることが多いのですが、このままでは工程能力指数Cpは算出できても、“最良、あるいは、最悪の特性を示した時の部品の偏差の組み合わせはどのようになっているのか?”までは分かりませんし、複雑なシステムに対する手計算での対応は事実上不可能です。
そのためツールによっては後述する図5のように、目的とする特性(最大偏差、最大値、最小値、立ち上がり/立ち下がり時間、など)を指定しておくと、解析終了後に解析結果を指定した特性値でソートし部品偏差の具体値を表示してくれる機能を持ったものがあります。そのような例としてPSpiceでの例をリスト1に示します。
このリストは図1の回路の1KHz時のV(out)を大きい順にソートしたものの抜粋で、このリストからでは R3→小 / R4→大 の組み合わせの時に最大値が得られたことが分かります。
(R1、R5、C1は感度解析の結果から影響が少ないことが分かっています)
この種の機能を使えば、どの様な部品偏差の組み合わせの時、目的とする値が得られたかを知ることができます。
また、コマンド型SPICEでリスト1のような機能を説明した資料・文献は少ないのですが、マクロコマンドを上手く組み合わせれば定数を読み出すことができます。
コマンド型の代表であるLTspiceで解析結果の定数を読み出す設定例を図3とリスト2に示します。
このように測定記録したデータを測定完了後に読み出した例が図4です。最大値が得られた試行回数こそ設計者が読み取ってやらなければなりませんが各部品の値はカーソルから読み出せますし、正確な値が欲しい場合はログファイルから読み取ることができます。
このようにして得られたPSpiceとLTspiceの結果を比較したものが表2で、絶対値よりも分かりやすい偏差で比較してあります。
PSpice | LTspice | |
---|---|---|
R3 (600Ω) | 0.95508 | 0.95275 |
R4 (20.2KΩ) | 1.0489 | 1.04946 |
V(out) (4.4V) | 4.7732V | 4.78547V |
表2:PSpiceとLTspiceの解析結果比較 |
表2を見るとツールは違っていても同じ傾向の結果が得られていることが分かります。
このように、目的とする特性を実現する定数の組み合わせが分かれば次回説明する予定のワーストケース解析と併せて設計を進めることができます。
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