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ウェアラブル機器設計で知っておきたい故障原因電子機器設計ノウハウ(3/4 ページ)

スマートウオッチやスマートグラスなどウェアラブル機器市場が立ち上がりつつある。この新たな機器であるウェアラブル機器の設計、製造には、未知の課題も多く存在するだろう。その1つが、故障原因だ。ウェアラブル機器は往々にして携帯電話機などモバイル機器と同一視されがちだが、モバイル機器にはないウェアラブル端末ならではの故障原因が潜む。本稿では、ウェアラブル機器の設計、製造で留意しておきたい故障原因を紹介する。

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課題

 ウェアラブル機器は“次世代技術”なので、「予測困難な欠陥はあり得ること」「この新技術が信頼できることを確証するために何をなすべきか」というのを認識しておかなければならない。新しい電子市場ではよく問題になることだが、新しいアプリケーションが安全で信頼できることを確証するためには信頼性予測に基づいて対処しなければならないいくつもの課題がある。

パッケージ問題

 ウェアラブル機器は小型フォームファクタが要求されることから、パッケージにはQFNのようなアプローチが取られるため、UCSPやCSP(Chip Scale Package)あるいはMEMS(Micro Electronic Mechanical Systems)タイプのセンサーが、これらの製品に対する一般的なソリューションとなる。

 同様に、システムインパッケージ(SiP)もパワーマネジメントやマイクロコントローラを構成するために広く利用され、その結果、多種類のセンサーが単一パッケージに組み込まれることになるだろう。小型の受動部品も利用される。繰り返しになるが、これらのパッケージおよび受動部品には幾つかの既知の故障モードがある。しかし、ウェアラブル機器の登場により、考慮すべき課題はさらに多くなる。


図5 人体各部の皮膚温度

保持温度

 皮膚に接触する電子デバイスの動作温度は、体温以下(37℃以下)に保たれなければならない。それ以上の温度になると、装着者が不快に感じ、さらに高温になると、苦痛になり、著しい不安感を抱くことになる。図5はこの問題を示すものだ。一方、非常な低温(−20℃以下)では機械的負荷との連動性が特に問題だ。そのため、ウェアラブル機器は、場合によっては、鉛フリーの要求やスズのウィスカー成長対策を含む医療用電子機器規格に準拠して製造される必要がある。

振動、機械的衝撃、落下試験

 振動問題が人体に付随することはほとんどないが、例外が生じることもある(特に、道具や輸送が伴う場合)。その例が電動のこぎりなど電動工具を使用する場合であり、この場合は精密医療デバイスに故障を引き起こすことが知られている。

 同様に、モバイル機器を落とした場合に機器の受ける機械的衝撃が1500Gに達することがある。ウェアラブルデバイスは軽量であるため衝撃レベルはもっと弱くなりそうだが、繰り返されることが予想される(例えば、靴に応用した場合)。

 ウェアラブル機器は、地面に落としたり、硬い表面にぶつけたりといったことに弱い。落下が繰り返されると、1回だけの場合よりもダメージが大きくなると報告されている。ウェアラブルに付随する問題点は、ユーザーが製品を装着して移動することから自然と拘束力が小さくなり、落下が繰り返されることだ。どのようにして製品破壊を防げばよいのか。

 タンブリング、あるいはクラタリングとも呼ばれる事象は物体が一端から落下したり、回転したり、他端をぶっつけたりすることなどにより生じる。このような多重衝撃はウェアラブルシステムに壊滅的影響を与える。電子デバイスを保持(支持)するための体系的方法論とともに、発生し得る故障モードに関する理解が必須だ。

水中やトイレに落とす

 トイレで屈もうとしてポケットに入れていた携帯電話機をトイレの中に落とした、という話を何度聞いたことだろう。また、残った水分をできるだけ除去しようと、携帯電話機やバッテリーを米びつの中に入れた(米には吸湿性がある?)、との話も聞いた。このような問題に対し、携帯電話機メーカーは回路基板にコンフォーマルコーティングや超疎水性素材コーティングを施して電子回路を保護するよう対策してきた。その結果、図6に示すように、水中に相当長時間浸しても故障しない機種が出てきた。

 水や雨にぬれた場合の対策は、ウェアラブル機器が生き残るための必須課題だ。


図6 水中に落とした携帯電話機

繰返し曲げ

 回路基板への部品のはんだ付けやプリント配線板自体の機械的耐久性はウェアラブル製品にとって最大のリスク要因の1つと考えられることから、繰返し曲げ試験が行われてきた。例えば、人体の動きは1日に1000回もの曲げ(膝の屈伸)を生じる。

 典型的な試験では、プリント配線板に1〜2mmの曲げを10万単位の回数で繰り返す。アプリケーションによっては通常のハード基板やフレキシブル基板よりも織物構造が望まれるので、今日のウェアラブル機器にとって、この問題は相当に普及してきた。

 幾つかのメーカーでは、電子回路を伸縮性素材に実装した製品を開発しつつある。この場合、伸縮性と接続性能が長期に維持できるかが問題だ。ウェアラブル機器は伸縮サイクルが膨大になる。次世代基板素材は特に高温環境で曲げを受けた場合に電気的特性が変化する可能性のあることが示されている。劣化あるいは経年変化は起こらないだろうか。何かがデバイスの導電体や接続性能に影響することはないだろうか。

銅(配線)の曲げと応力

 繰返し曲げの問題を回避する方策として、接続機能をハード(硬質)回路基板上の部品構造としてではなく伸縮可能な構造にするため、シリコン・ナノワイヤー構造を実装するシステムができつつある。ここでまた、この新技術の耐久性はどうなのか、が問題となる。ナノワイヤーは繰返しの曲げや応力に耐えられるだろうか。

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