フォトカプラ不要のAC/DCコンバータIC、中国CQCなどに準拠:Power Integrations InnoSwitch
Power IntegrationsのAC/DCコンバータIC「InnoSwitch」は、2次側から1次側にフィードバックに、新しく開発した「FluxLink」を採用している。磁束を利用してフィードバック情報を送るもので、フォトカプラが不要になる。
Power Integrationsは2014年11月、AC/DCコンバータICの新ファミリ「InnoSwitch」を発表した。
InnoSwitchは、耐圧650VのパワーMOSFET、1次側コントローラ、同期整流(SR)機能を持つ2次側コントローラ、フィードバッグ回路を、16端子の「eSOP」パッケージに搭載したもの。このフィードバック回路に採用されているのが、Power Integrationsが新たに開発した「FluxLink」技術である。FluxLinkは磁束を利用してフィードバック情報を2次側から1次側に送信するものだ。フォトカプラなどの絶縁フィードバックが不要になるので、部品点数が減って設計がよりシンプルになり、フォトカプラの経年劣化による性能の低下もなくなる。
最大25Wの出力を実現していて、携帯電話機やセットトップボックス(STB)、ゲーム機など幅広い用途に使用することが可能だ。さらに、米国エネルギー省(DoE:Department of Energy)が2016年から義務付ける新しいエネルギー効率基準であるLevel 6も満たしている。さらに、中国の安全規格であるCQCにも準拠していて、標高5000mで使用することもできる。
1万個購入時の単価は0.59〜0.78米ドル。Power IntegrationsのWebサイトでは、5V/2AのUSBチャージャのリファレンス設計などを公開している。InnoSwitchを使えば、このチャージャが30個程度の部品で構成できる。Power Integrationsによれば、これは既存品に比べて約1/3の部品点数だという。
Power Integrationsは米国カリフォルニアを拠点とし、高耐圧の電力変換システム向けAC/DCコンバータICやLEDドライバIC、IGBTなどを手掛けるファブレス半導体メーカーである(関連記事:USB充電をより速く、クアルコムと協業しスマホ市場で地位向上を狙うPower Integrations)。2013年の売上高は3億4700万米ドルである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AC-DC電源の設計ポイント
スイッチング方式のAC-DC電源は、旧来型のリニア方式では得られない高い効率を実現するものとして急速に普及した。しかし、スイッチング方式は、従来は存在しなかった新たな課題ももたらした。結果として、AC-DC電源の設計は、従来よりもはるかに複雑なものとなった。では、その課題とはどのようなもので、それを解決するためには、どのような工夫を盛り込む必要があるのだろうか。AC-DC電源設計の秘訣
電源の設計において、機能/動作の仕様を満たすようにするのは当然のことである。しかし、満たすべき事柄はそれだけではない。EMC性能や安全性などに関する国際規格に従いつつ、さらに高効率化、小型化の要求にも応えなければならない。本稿では、電源の基本性能を犠牲にすることなく、そうした要求に応える方法を紹介する。「アイソレータ」を活用せよ!
絶縁技術を利用することで、機器の安全性を保証したり、ノイズを低減したりすることが可能になる。絶縁を実現するにはアイソレータを適切に選択しなければならないが、それには各種アイソレータがそれぞれどのような手法で実現されているのか、その特性はどのくらいのものなのかといったことを理解しておく必要がある。フォトカプラでもラッチ回路ができる!?
2端子ラッチ回路というと多くの読者は“サイリスタSCRを使ったラッチ回路”を思い浮かべるだろう。まさにその通りなのだが、少し発想を変えると、サイリスタよりも手ごろなフォトカプラで2端子ラッチ回路が構成できることが分かった。今回は、“フォトカプラのラッチ回路”を紹介しよう!絶縁定格が最大1kVのデジタルアイソレータ、フォトカプラの代替狙う
シリコン・ラボラトリーズ(以下、シリコンラボ)の「Si80xx」ファミリは、絶縁定格が最大1kVのデジタルアイソレータである。フォトカプラの代替品として洗濯機や乾燥機などの家電製品、試験装置、測定装置などの用途に向ける。