ついにやってきたUSB Power Delivery(USB PD)とは:しっかり分かる“USB パワーデリバリ”入門(3/3 ページ)
USB Power Delivery(USB PD)をご存じでしょうか? 100Wまでの給電を全てUSBケーブルで行ってしまうという新しいUSB規格。既にUSB PDの仕組みを搭載したPCも発売されています。ここでは、あらゆる機器の給電スタイルを一新する可能性のあるUSB PDがどのような規格で、どんなことができるかなどを解説していきます。
USB PDの主役たち――Type-CとUSB PDコントローラ
今後、電子機器の在り方を大きく変えてしまう可能性を秘めたUSB PDですが、その実現に不可欠な主役たちを紹介しましょう。
主役の1つが、本稿に度々、登場してきたType-Cコネクタです。このコネクタはリバーシブルな形状になっているので、プラグを差し込む際に、裏表を気にすることなく差し込めます。また、1万回以上の抜き差しが可能な上、既存のMicro-Bコネクタの2倍のこじり強度を持っています。大きさは、プラグ部で8.25mm×2.4mm(幅×高さ)と、モバイル機器にも実装できるサイズ感です。次にピンの配置(図4)に目を移すと、ピンの配置がほぼ点対称になっていることが分かります。Type-Cのピンのうち、USB PDで重要な役割をもつピンがConfigurable Channel(CC, CC2, CC)です。このピンを通してUSB PDの信号を機器間でやりとりすることになります。Type-CがUSB PDに不可欠なコネクタである理由が、ここにあります。なお、図4のプラグのピンのうち、黄色で色付けしたピンが、DisplayPortやHDMIなどの通信ピンとして使用可能なピンです。
もう1つの主役が、USB PDコントローラです。USB PDの仕組みを搭載した機器同士がつながると、「どんな大きさの電力をやりとりするのか?」「ソースとシンクの関係やUSBホストとデバイスの関係をどう設定するのか?」「DisplayPortやHDMIなどの通信は、どのピンを使って行うのか?」といったやりとりを機器間ですることになります。こういった処理を汎用CPUやディスクリートを駆使して行うことは不可能ではないものの、ソフト設計にかかる工数やシステムコストを考えると、実現に当たってのハードルは相当高くなります。そこで求められるのが、こういった処理を一手に引き受けてくれるICです。そのICこそ、USB PDコントローラなのです(図5)。
コントローラは、あらかじめセットされたパラメータで自動的に動作するだけでなく、パラメータ変更も動的に受け付けることが期待されるます。例えば、シンク側は、通常の動作中なのか、スタンバイ状態なのかによって、必要とする電力は変わります。この場合、コントローラは機器の状態にあわせたパラメータ変更を受け、電力のネゴシエーション(交渉)を行うことになります。USB PDコントローラは、STマイクロエレクトロニクスを始めとして、いくつかの半導体メーカーで、既に量産が開始あるいは計画されています。
最後に
USBは1990年代に世に出て以来、現在最も普及している通信インタフェースの1つです。周りを見渡してみると、PC、カメラ、スマートフォン、タブレット、テレビとUSBのインタフェースを持った機器であふれています。このUSBが、USB PDとType-Cという次世代規格により、大きく進化しようとしています。100Wの給電やロールスワップの他、USB以外の通信規格の伝送が可能になることで、ACアダプタの汎用化や、ケーブルやコネクタのUSB Type-Cへの集約が進むことでしょう。この流れは、今後の電子機器の姿や使い方を大きく変えるのではないでしょうか。そして、USB PDの実現に不可欠な存在が、Type-CとUSB PDコントローラです。各半導体メーカーがUSB PDコントローラの提供を進めていくことで、USB PDの普及が加速されるでしょう。近い将来、「あらゆる機器をUSBケーブルでつなげて、給電しながら高速データ通信をする」といったことが当たり前になるかもしれません。
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