IGBTの熱計算により 電力設計の有効性を最大化:電源設計(4/4 ページ)
1つのダイで構成される半導体デバイスのジャンクション(接合部)温度の計算方法はよく知られています。ダイの電力損失を測定し、ダイとパッケージ間の熱抵抗を掛けて、ケースから接合部への温度上昇を計算すれば求められます。しかし、IGBTとダイオードを1パッケージに封止したパワーモジュールの場合はどうすれば良いでしょう。ここでは、IGBTとダイオードの熱抵抗を用いて平均およびピーク時のジャンクション温度を計算する方法を解説します。
ピークのダイ温度を求める
上記の分析で計算された温度は、平均のダイ温度です。これはサイクル全体を通して変動し、ピークのダイ温度は図7および図8の過渡的な熱曲線を使用して計算できます。これに関して、曲線から過渡的な情報を読み取る必要があります。周波数が60Hzの場合、半サイクルは、8.3mSです。したがって、8.3mSに対して50%の負荷サイクル曲線を使用した場合、Psiの値は次のようになります。
IGBT 0.36℃/W
Diode 0.70℃/W
TJpk-IGBT=TJ-IGBT+(PIGBT・RIGBT)
IGBTダイのピーク温度
- TJpk-IGBT=118℃+(65W・0.36℃/W)
- TJpk-IGBT=141℃
ダイオードのダイのピーク温度
- TJpk-DIODE=TJ-DIODE+(PDIODE・RDIODE)
- TJpk-DIODE=129℃+(35W・0.70℃/W)
- TJpk-DIODE=154℃
結論
マルチダイのパッケージにおいて半導体のダイの温度を評価するためには、単一ダイのデバイスの場合と比較してさらなる分析テクニックが必要です。ダイ温度を正確に計算するためには、両方のダイでDCおよび過渡的な熱情報を取得することが必要です。また、両方のデバイスで電力損失を測定し、正弦波の半周期の波形全体で損失を分析することも必要です。この分析により、システムにおける半導体が最適なシステム性能を発揮するため安全かつ安定した温度で稼働することに確信が得られるでしょう。
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