IGBTとダイオード機能を集積した6.5kVパワーモジュール:インフィニオン 6.5kVパワーモジュール
インフィニオンテクノロジーズは、IGBTとフリーホイールダイオード機能をシングルチップに集積した、6.5kVパワーモジュールを発表した。同じ実装面積の従来型モジュールに比べて電流密度が33%向上し、高い放熱性能を備えた。
インフィニオンテクノロジーズは2015年6月、IGBTとフリーホイールダイオード機能をシングルチップに集積した、6.5kVパワーモジュールを発表した。最新鋭の高速鉄道や高性能機関車、HVDC送電システム、石油/ガス/鉱業業界などで使用する高圧インバータでの用途に向ける。
電流密度が従来比33%向上
今回発表された6.5kVパワーモジュールは、ダイオード制御機能付きの逆導通型IGBT(Reverse Conducting IGBT with Diode Control:RCDC)チップとなる。RCDC技術を使用することで、同じ実装面積の従来型モジュールに比べて電流密度が33%向上し、高い放熱性能を備えた。
電流密度の向上は、順電流と逆電流の両方向でアクティブなシリコン面積が拡大したことによるもので、設計者はスペースを犠牲にすることなく、システムの出力向上が可能になるという。また、出力容量はそのままで、IGBTの数を減らすことでシステムの寸法、重量、コストを抑えることもできる。
さらに、IGBTとダイオードのモノリシック集積により、ダイオードのI2t値とIGBT、ダイオードのサーマルインピーダンス(Rth/Zth)が向上した。ジャンクション温度(Tvj)リップルが低下したことで、より長寿命の動作に対応する他、ゲート制御の使用オプションにより、導通損失とスイッチング損失のトレードオフを通じて全体的な効率性の最適化が可能になるという。
パッケージはIHV-A高絶縁パッケージで、既存アプリケーションとの直接交換が可能。既にサンプル出荷を開始しており、ドライバ評価ボードを含むスターターキットは、2015年第4四半期に提供を開始する予定。
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