3万円オシロの修理、高圧パルス電源は甘くない【暫定修理編】:Wired, Weird(3/3 ページ)
今回は、3万円のオシロスコープに内蔵された電源基板の修理の続きを紹介する。前回は破損していた電源制御ICを、オシロスコープの電池のコネクタへ直流電源を供給してとりあえず動かすことにした。しかし、他にも破損している部品があることが見つかった。
8.4Vを供給
取り付け前にDC-DCコンバータの出力電圧を8.4Vへ調整した。なおオシロスコープの内部には大きなスペースがありこの改造でも十分な余裕があった。改造した電源部をオシロスコープに組み込み、AC100Vを通電した。図6に示す。
オシロスコープの液晶表示が点灯し、テスト端子の波形が確認できた。消費電力は12.2Wだった。借用したオシロスコープでは同じ接続で11.2Wであり、修理したオシロスコープは1Wほど消費電力が高かった。降圧DC-DCコンバータを追加したので1Wの電力増は、問題はないだろう。これでとりあえずの暫定修理は完了した。
今回の修理で取り外した2個のICの写真を図7に示す。なおICの型名が見やすいようにライトアップして撮影した。
図7の右側のICがAC100VからDC8.4Vを生成する電源制御ICのR7731A、左側がDC8.4VからDC−7.4V電源を生成するDC-DCコンバータICのMC34063Aだ。
電源は、なぜ破損したのか?
では、そもそも、オシロスコープの電源がなぜ破損したのかを推察してみよう。
破損した回路の部品から、高圧パルス電源を測定したときに漏れた高圧の電流がオシロスコープの二次側のマイナス電源から電源基板の一次側を抜けて、AC100V側へ放電したものと思われる。AC100Vの電源のつなぎ方に問題があったようだ。それは高圧パルス電圧の測定時に高圧電源の電源AC100Vとオシロスコープの電源を同じコンセントから取ったことでオシロスコープの電源が破損したと思われるからだ。
今度、同じような測定を行うときは別々の電源にするか、電池を使って測定した方が良さそうだ。とりあえずはオシロスコープが復活し、修理の仕事を再開できた。
その後、修理したオシロスコープを使って高圧パルス電源の評価をリトライした。前の反省もあって電源供給ルートをオシロスコープと降圧パルス電源で別々のルートで供給し、高圧プローブを通して、恐る恐る高圧パルス電源の電圧を測定した。最初はプローブの接続が逆だったので、逆電圧の高圧パルス波形が測定できた。
これならう大丈夫だろうと思い、高圧プローブの極性を入れ替えて測定したら……、
なんと、またオシロスコープの表示が消えてしまった!!
残念ながら高圧パルス電源の測定はそんなに甘いものではなかった。再度修理を行う必要があるが、そろそろ中国のサイトで手配した部品が届くころだ。続きはまた次回に報告する。
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