Bluetooth 4.2 セキュリティ対策の仕組み:今こそ知っておきたい「LEプライバシー」(3/3 ページ)
さまざまなモノがインターネットにつながる中、自分の行動が簡単に追跡されてしまうという、プライバシーに対する懸念も高まっている。Bluetooth 4.2では、セキュリティとプライバシー保護の機能が強化された。今回は、「LEプライバシー」と呼ばれる仕組みを紹介しよう。
Bluetooth 4.2での変更点は?
ただし、ここまで説明してきたBluetooth Smartプライバシーの内容は、全て、Bluetooth 4.0コア仕様の最初のバージョンから導入されています。それでは、Bluetooth 4.2では、何が変わったのでしょうか。
通常、ランダムなプライベートMACアドレスの変更は、メーカーの製品ファームウェアに実装されたタイマーに従います。そのため、メーカーはMACアドレスが変更される頻度を把握しています。しかし、相互接続したことのある2台のデバイスは、そのタイマーを使用せずに即座に再接続できるよう設計されている、という特殊なケースも存在します。
ここで、デバイスは“Directed Advertising”と呼ばれる処理を行うことができます。Directed Advertisingでは、アドバタイジング・パケットには、
1)アドバタイジングを送信するデバイス
2)アドバタイジングを受信するデバイス
このそれぞれのMACアドレスが含まれます。
これは、以前接続したことのある特定のデバイスに「そこにいる場合は再接続してください」と招待状を送るようなものです。
「アドバタイジングを送信するデバイス」が使用するMACアドレスは、ランダムなアドレスですが、Directed Advertisingでは「再接続アドレス(reconnection address)」と呼ばれる特別なタイプのプライベートアドレスになります。
再接続アドレスは、他の状況で使用されるプライベートアドレスとは異なり、変更は行われてもタイマーは使われません。タイマーではなく、デバイスのオン/オフや新規コネクションの確立といった、ユーザー側のアクションによってアドレスが変更されます。
より多くのオプションをメーカーに提供するため、Bluetooth 4.2では同じタイマーを使ったメカニズムを使用して、再接続アドレスを新たなランダムアドレスに変更できるようになりました。これによりメーカーは、プライバシーおよびプライベートアドレスに関して、自社製品がどのように動作するかを完全に制御できるようになるのです。
さらに、IRK暗号キーを使用して、プライベートアドレスからデバイスの実際のMACアドレスへと戻す処理は、Bluetooth Smartアーキテクチャ側のホストではなくコントローラで行われます。そのため、従来よりもはるかに高速で、電力効率も高くなります。
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