検索
特集

メッシュネットワーク技術「TSCH」とは産業用IoTで注目を集める(5/5 ページ)

無線でセンサーデータを収集する必要のある産業用IoT(Internet of Things)。そうしたワイヤレス・センサー・ネットワーク(WSN)を構築する上で、TSCH(Time Synchronized Channel Hopping:時間同期チャンネルホッピング)と呼ばれるメッシュネットワーク技術が注目を集めている。TSCHとは、どのような技術なのか――。詳しく紹介していく。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

産業用IoTの実現

 TSCHはすでに、WirelessHART(IEC62591)などの既存の産業用無線規格の基本構成要素であり、新しいインターネット・プロトコル・ベースのWSN規格(IEEE 802.15.4eなど)を実現するために不可欠な要素になっています*1)。また、IETF 6TiSCHグループ内でも、TSCHリンク層を標準化するための作業が現在行われています*2)。関連規格へのTSCHの採用により、これからも広範囲な普及が進むことでしょう。

 TSCHネットワークはすでに、数年間にわたるバッテリー寿命を実現しており、産業用プロセスモニタリング*3)、国境警備*4)、データセンターのエネルギー効率*5)、都市規模のスマート駐車ソリューション*6)などの、要求の厳しい幅広いアプリケーションにおいて、99.999%を超えるデータ信頼性を達成しています。信頼性が高く、高度に構成可能な低消費電力ワイヤレスネットワークを実現するTSCHネットワークは、産業用IoTに理想的なものなのです。

【著:Ross Yu氏/Linear Technology ダスト・ネットワークス製品グループ 製品マーケティーング・マネージャ】


参照リンク:*1)IoT(Internet of Things)に最適な、高信頼で低消費電力のWSN
*2)https://datatracker.ietf.org/wg/6tisch/charter/ / *3)Emersonのプロセス
*4)Integrated Security Corporation / *5)Vigilent / *6)Streetline



補足記事:ワイヤレス通信に対するマルチパスフェージングの影響

 マルチパスフェージングは、環境内の各物体の位置と性質に左右されるため、実際の環境では予測不能です。ただ幸いなことに、図Aに示すように状況は周波数によって異なるという特性があります。つまり、マルチパスフェージングのために受信されないパケットを別の周波数で再送信すると高い確率で成功するのです。


図A マルチパスフェージングにより、受信機を数センチ移動しただけでリンク品質が大きく変動する。

 環境内の物体は常に同じ場所に止まっているとは限らないため(車が通り過ぎる、ドアが開閉されるなど)、マルチパスの影響は時間とともに変化します。図Bは、2つの産業用センサー間の単一の無線経路での26日間にわたるパケット到達率で、システムが利用する16のチャンネルそれぞれについて示したものです。


図B 無線リンクのパケット伝達率は時間とともに変化する。

 1週間単位のサイクルで、平日と週末で明らかに違いのあることがわかります。どの時点でも到達率の高い良好なチャネルと到達率の低い不良チャンネルがあり、さらに他のチャンネルの状況はさまざまです。チャンネル17は概して良好ですが、少なくとも1つの期間では到達率がゼロです。ネットワークのそれぞれのパスは性質的には似たような挙動を示しますが、チャンネル性能は異なり、ネットワークのどの地点においても良好なチャネルは1つもありません。

 干渉とマルチパスフェージングのため、信頼性の高い無線システムの構築にはチャンネルとパスのダイバーシティーを利用することが重要です。

本文参照元(「WSNにおける一般的なアプローチ」の項)に戻る

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る