FETプローブでRFスペアナの測定範囲を拡大:Design Ideas 計測とテスト(1/2 ページ)
今回は、安価で保護機能も十分な利得1のプローブで、実験室用の手頃なオシロスコープと同じ入力インピーダンスを提供し、スペアナの50Ω入力インピーダンスを駆動できる回路を紹介する。
通常、スペクトラムアナライザーの周波数特性は、低くても10Hzが下限である。これを1Hz以下の狭帯域FFT(高速フーリエ変換)ソフトウェアと組み合わせると、低周波性能を拡張できる。最新のスペアナを高性能アナログ回路の設計やデバッグ用の有力ツールに変身させられる。だが残念ながら、ほとんどの場合RF用のスペアナは入力インピーダンスが50Ωと低く、高インピーダンスアナログ回路に適用するには、重い負荷になる。
間に合わせに、50Ω入力に953Ωの抵抗を直列に挿入して、入力インピーダンスがいくらか高いプローブを作ることもできるが、入力インピーダンスはたかだか1kΩにしかならない上、測定信号は26dBも減衰してしまう。
しかも、ほとんどのRFスペアナはAC結合になっていないため、DC入力成分は内部の終端抵抗やフロントエンドミキサーに直接加わる。AC結合で10Hzの低周波応答を保つには、少なくとも2μFの結合容量を、953Ωの入力プローブと直列に接続しなければならない。オシロスコープの入力回路は、プローブの誤接続や過渡的な容量性過負荷には耐えるとはいえ、低インピーダンスのAC結合プローブをスペアナで用いると、高価な上に交換しにくいフロントエンドミキサーを破壊しかねない。
半日で組み立て可能な性能拡張回路
高インピーダンスプローブは市販されているが、購入や修理する費用が高くつく。そこで、その代替方法を紹介する。安価で保護機能も十分な利得1のプローブで、実験室用の手頃なオシロスコープと同じ入力インピーダンスを提供し、しかもスペアナの50Ω入力インピーダンスを駆動することができる。このプローブは、100kHzでの利得が0±0.2dBである。入力インピーダンスは1MΩ/15pF、最大入力電圧は0.8Vp-pだ。負荷インピーダンスは50Ω、−3dB周波数特性は10Hz〜200MHzと広い。
通過域リップルは1dBp-p未満と小さい。1MHzにおける入力ノイズ電圧は10nV/√Hz未満。歪(ひずみ)は10MHz、0.5Vp-p入力に対して、2次歪が−75dBc未満、3次歪は−85dBc未満。消費電力は16mA×(±5V)である。
図1の回路は、入手しやすい安価な部品を用いて、半日で組み立てることができる。入力は、1MΩと15pFが並列になっており、実験室用オシロスコープと同じ特性を提供する。このアクティブプローブは、普通の1対1または10対1のオシロスコーププローブの代わりに用いることができるため、適用範囲が広い。
D1の逆接続シリコンダイオード対は、入力信号をプラスまたはマイナスの順方向電圧にクランプして、スペアナのフロントエンドに加わる信号の振幅を制限し、入力ミキサーを過負荷やESDによる損傷から保護する。
ユーザーの大多数は、プローブとスペアナを小振幅信号やノイズの測定に使うので、大振幅信号を制限しても、ほとんどのアプリケーションには差し支えない。
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