USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャーとは:双方向での電源供給を可能にする(3/3 ページ)
リバーシブルなUSB Type-Cケーブル/コネクターの普及がはじまっている。そして、電源ケーブルもUSB Type-Cによる給電に移行しようとしているが、双方向での給電が可能になるなど根本的な電源供給アーキテクチャの変更が必要になる。そうした中で、登場してきたUSB Type-Cでの給電を可能にする「USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャー」とはどのようなものか、紹介していこう。
昇降圧チャージャー
昇降圧トポロジーアプローチを図5に示す。昇降圧トポロジーは、「入力電圧>出力電圧」の場合は降圧モードで、「入力電圧<出力電圧」の場合は昇圧モードで、さらに双方向の「入力≈出力」関係が成り立つ場合は昇降圧モードで動作する。このような柔軟性により設計が向上し、最小のソリューションサイズで全体的な効率を最大化できる。これにより、システム設計者のさまざまな要求に対応できる。
すでに、こうしたUSB Type-C昇降圧バッテリー充電システムを実現するチャージャーICが市場投入されている。その一例が「ISL9237」(Intersil[インターシル]製)である。図6に同ICの昇降圧チャージャーのトポロジーを示す。
このICは、4個のスイッチングFET、1個のインダクター、1個のバッテリー接続FET(BFET)で構成されている。4個のスイッチングFETはフォワード降圧部とフォワード昇圧部に分類されている。このトポロジーは状況(入出力電圧条件)に応じて、フォワード降圧モードまたはフォワード昇圧モードでバッテリーを充電する。また、リバース降圧モードでの動作も可能で、USBポートから給電を行い、タブレット、スマートフォンのほか、あらゆる電子機器への充電が可能な新しいタイプの携帯型パワーバンクなどの外部電子機器を充電できる。
まとめ
ISL9237など、USB Type-C昇降圧バッテリーチャージャーICが登場してきたことにより、モバイルPCシステムや携帯機器に対してリバーシブルUSB Type-Cコネクターを使った最適な双方向パワーデリバリーが可能になる。USB Type-Cは、コンピュータと外部電子機器間の双方向電力/データ伝送を簡単にする。こうしたUSB Type-Cエコシステムは、わずか1本の小型ケーブルであらゆるデバイスへの対応が可能となる新たな時代を切りひらこうとしている。
【著:Jia Wei氏/Intersil[Marketing and Applications Director, Mobile Power Products Group]】
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