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GaNに対する疑念を晴らすGaNにはGaNの設計を(1/4 ページ)

新しいMOSFET技術が登場すると、ユーザーは新しいデバイスを接続してどの程度効率が改善されたかを測定します。多くの人が既存の設計のMOSFETをGaNに置き換える際にもこれと同じ方法を使ってしまい、性能の測定結果に失望してきました。GaNの本当の利点を引き出すには、通常、システム設計を変更しなければなりません。GaNを既存のMOSFET技術に対する完全な互換品(ドロップイン置換品)と見なすのではなく、さらなる高密度・高効率設計を実現する手段と捉えるべきです。

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「期待外れ」とのレッテル

 ある電源設計エンジニアの話です。

 私は、GaNトランジスタの優れた性能を耳にし、大きな期待を抱いて、サンプルをボードに取り付けました。電源を入れて負荷をかけたものの、以前より性能が向上していませんでした……。それどころか、以前はなかったスイッチング問題も発生しました。GaNトランジスタは期待外れ。がっかりです。

 これは、どういうことでしょうか? 本当にGaNトランジスタは使えないデバイスなのでしょうか?

Si-MOSFETのための回路では……

 20年以上にわたり、シリコン・パワーMOSFET(Si-MOSFET)はスイッチング電源のスイッチとして使用されてきました。スイッチ用途では、高速度と周波数に対する電力損失の低下も従来技術であるバイポーラトランジスタでは達成できなかったのです。Si-MOSFETは、長期間にわたって改良され、理想的なスイッチの性能に近づいています。しかし、最終用途でSi-MOSFETの性能をフルに活用したい場合は、これらのトランジスタに特有の非理想特性を理解しておく必要があります。シリコン技術の進歩に伴ってSi-MOSFETのスイッチング速度が上がり、回路設計者は寄生素子を管理してノイズと干渉を抑えながら効率を改善するために、部品配置やプリント基板のレイアウトに関して、より明確な判断を下す必要に迫られてきたのです。

 GaNトランジスタは、理想的なスイッチの実現に向けた進化過程で一歩先を行く存在です。いくつかの項目で多少の改善ではなく、飛躍的な性能向上をもたらします。構成部品の配置と寄生素子の制御に関する旧来からの課題は、従来と同じ原則に従うものの、現在ではより複雑化していることです。したがって、基板レイアウトの基本要件は変化しており、低速のSi-MOSFETで要求される値よりも厳密なドライブおよび電源ループ設計が必要となっています。この点で、GaNトランジスタをSi-MOSFET用に設計された既存の回路に組み込もうとすると、問題が生じたり、期待したほど性能が向上しなかったりするため失望することも少なくありません。

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