電源システムハードウェアのソフトマネジメント:アナログとデジタルの長所生かして解決(2/3 ページ)
プロセッサの電源電圧が1V未満になるなど電源システム設計はより複雑で高度になっている。そうした電源システム設計をより簡便にするデジタルマネジメント技術が登場しているが、出力精度などはアナログマネジメント技術に劣る。そうした中で、デジタル/アナログ双方の長所を生かしたパワーマネジメント技術に注目が集まっている。
従来のソリューション
シーケンス制御、監視、モニタリング、マージニングなどのパワーマネジメントのタスクは、スーパーバイザー、シーケンサー、A-Dコンバーター(ADC)、D-Aコンバーター(DAC)、アンプ、マイクロコントローラなどのデバイスの雑多な組み合わせで処理されてきました。関連性を欠くこれらのデバイスが連携動作するよう調整するのに、設計作業の大半が費やされます。マージニング、ADCのモニタリングおよび、EEPROMによるフォルトログの各機能を追加したスーパーバイザーとシーケンサーから、集積化されたソリューションが生まれました。
ただし、これらのデバイスのトリミング、マージニングおよび、モニタリングの電圧精度は高くありません。また、ADC、DAC、コンパレーター、PWM出力とともに、用途が確定していない多数のデジタルゲートを内蔵しているシステムオンチップ(SoC)デバイスもあります。これらのデバイスにはパワーマネジメントのアーキテクチャが欠けているので、最も基礎的なタスクを実行させるのにさえ多量のプログラミングが必要で、設計と検証作業に数カ月を要します。
電源システムのデジタルマネジメントの推進を受けて、DC-DCコンバーターループにADC、デジタル補償回路および、デジタルPWMを採用したデジタルパワーソリューションが登場しました。このようなサンプリングシステムには本質的に量子化が伴うので、デジタル・ループは電源の出力電圧に大きなノイズとリップルを生じます。また、それらのトランジェント応答は遅く、精度が低い上、動作が安定せず予測不能の傾向があります。他方、アナログ・ループは高速かつクリーンで、はるかに予測可能です。複数の電源を管理するには、POL電源に対してデジタル構成設定と通信を行う必要がありますが、アナログ世界とデジタル世界の両方の長所を生かすために電源ループ自体をアナログのまま保つことができます。
全てそろったソリューション
POL電源の動向を念頭に置いて、パワーシステムマネジメント(PSM)ソリューションが登場してきています。それらPSMソリューションは基本的な考え方として、電源ループはアナログのまま維持し、それにデジタルインタフェースと制御回路を追加しています。これを図1に示します。
PSM製品は、図2に示すように、相互運用可能な幅広いデバイスがあり、DC-DC変換回路を内蔵しているものと内蔵していないものがあります。
これらのデバイスは全て業界標準のPMBusインタフェースを介してボードコントローラと通信を行います。PMBusを選択すると、ファームウェアを再利用できるので、設計時間を短縮するのに役立ちます。コード開発が不要な自律動作を希望する場合は、エンジニアリング・レベルの開発用ソフトウェア「LTpowerPlay」が提供されており、デバイスの構成設定をカスタマイズできます。
これらのPMBus準拠のデバイスの中で、パワーシステムマネージャーは既存のアナログパワーシステムを包含するデバイスです。これらは、0.25%精度の16ビットADCを使って電源出力電圧を測定し、それを目標電圧レジスタと比較し、電源のフィードバック(トリム)ピンに帰還する10ビット電圧DAC出力を介して電源を調整します。±0.25%のDC精度により、負荷ステップ時に電源が変動する十分なマージンが与えられるので、バイパスコンデンサーの要件が緩和され、その結果ボード面積を節約できます。電源を連続的にモニターして調整するトリム・サーボ・ループによりボードの長期信頼性が改善し、時間と温度の全範囲にわたりドリフトを防ぎます。正確な電源電圧設定により、ボードのマージンテストによる不要な歩留り損失が減少します。
トリム機能により、電源電圧を微調整して、与えられたシステム負荷で消費されるエネルギーを最適化することができます。ADCによって与えられる電圧、電流および温度のデータにより、システム性能を深く理解してボードの信頼性を高め、ボードの交換を予測し、消費電力を削減できる可能性があります。設計の微調整の多くは、ボードを製造しなくても、レジスタの設定変更により達成できるので、市場投入までの時間が短縮されます。
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