「Thread」における6LowPANの活用(前編):IoT時代の無線規格を知る【Thread編】(4)(1/3 ページ)
ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」を解説する本連載。今回は、IPv6と802.15.4技術の統合を実現するレイヤーである“6LoWPAN”について解説していく。
6LoWPANとの関係性
あらゆるデバイスやセンサーがつながる「IoT(モノのインターネット)」時代を迎え、ホームネットワーク向けに注目を集める無線規格「Thread」。本連載は、Thread Groupが発行するホワイトペーパーから、Threadの詳細を解説している。
前回は、ホワイトペーパー「Thread Overview」から、Threadのネットワークトポロジーとその形成手順の基礎を紹介した。今回は、2つ目のホワイトペーパー「6LoWPAN」から、Threadと6LoWPANの関係について解説していく。
<Thread Groupが公開するホワイトペーパー>
1. Thread Overview
2. 6LoWPAN
3. Security & Commissioning
4. Boarder Routers
5. Battery Operated Devices
序章
インテリジェントなデバイスは私たちの暮らしに、より楽しさや生活のしやすさをもたらしてくれる。これからのスマートホームでは、デバイス同士がつながることで、個々の情報を共有することが当たり前になる。無線通信技術は、デバイス同士のコミュニケーションに最適な手段である。スマートホームにおける無線ネットワークは、例えば高い通信信頼性と非常に小さなエネルギー消費を両立した能力が求められるなど、これまで満たされることのなかった要求を満足させなくてはならない。
Threadは、RF接続プロトコルにIEEE802.15.4通信規格を使用する。この規格は低速だが低消費電力のWPAN(Wireless Personal Area Network)向けにデザインされている。IEEE802.15.4を、スマートホームにおける接続信頼性をさらに満足なものにするため、ThreadはIPv6での接続を採用することで、デバイスがお互い直接通信を行い、かつ、クラウドサービスにアクセスしたり、Thread対応のスマートフォンアプリケーションを通じてユーザーと交信したりする。IPv6と802.15.4技術の融合は、IPv6のネットワーク層に必要な能力と、802.15.4のリンク層の性能をスムーズに適合させるレイヤーの開発により実現した。このレイヤーは、図1にあるように“6LoWPAN”といわれる。
ネットワーク層プロトコルとしてIPv6を使用することは、「RFC2460」の規定から最低のMTU(Maximum Transmission Unit)として1280バイトのサポートが必要となる。IEEE802.15.4で定義する最大の物理層パケットサイズは127バイトである事実を考慮すると、差分を吸収するためのアダプテーション層が必要であることが明らかである。
6LoWPANアダプテーション層は、パケット断片化、ヘッダー圧縮(IPv6ヘッダーとUDP:User Datagram Protocolのような通信ヘッダー向け)などの技術を採用している。これにより、家庭にあるデバイスでIPv6パケットの送受信を確実に実施できる。
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